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外国為替古今東西
外国為替古今東西
1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

2010年9月 2日

●第60回 「資本輸出のすすめ」

株式会社マネーパートナーズ ホームページ寄稿          2010年 9月

8月30日の景気対策、円高対策は共に不発に終り、気の毒な政府・日銀にメディアは冷笑を浴せた。しかし、数日前に「貸し替え」という内容の無い空砲を撃っただけの米国FEDが何やら本当に金融緩和をしたかのように賞められ、中途半端な金融緩和をした日銀が無策だと叱られるのを見ると、何時もながらのことだが、日銀のマスコミ操作の拙劣さと日本のメディアのマゾヒズムにうんざりする。

正直云って現在の1ドル85円前後の相場を90円以上の水準に安定的に変更できる日本当局の政策手段は現状では無いと考えるべきだろう。先月来の円高の動きのもっとも大きな原因は、米国の景気腰折れの不安増大が金融緩和・金利低下という連想を生み、日米金利差は拡大しないという想定が円高を招いたわけである。ということは、日銀が金利を下げれば市場の想定は崩れて円高は止まる筈である。しかし、日銀が85円という「円高」を是正するために、0.1%の政策金利を引下げるという可能性はゼロである。

日本がドル買い介入をすべきだという論もある。米欧当局は当面のドル・ユーロの相場について問題意識を持っていないから、ドル高、ユーロ高にするために日本と協調して介入するメリットは何もない。したがって日本の単独介入ということになる。単独介入でも規模によっては短期的に円安になることは間違いない。2、3円は動くだろう。「単独介入について米欧当局の理解を得るよう働きかけよ」という情け無い社説を書いた新聞があった。「単独介入するけれど文句云わないで黙っていてね」ということらしい。日本が単独介入しても、米欧当局が表向き反対することはない。しかし、勿論賛成することもない。メディアは、日本が米欧の支持を得られなかったために単独介入をした、したがって、その効果は限定的だと書くだろう。市場は、日本が介入という奥の手を使ったがその威力は続かないと見て安心し、円買いに走るだろう。結果は更なる円高だろう。

では何をしたら良いのか。確実に有益なのは資本輸出の拡大だろう。日本の企業は債務を減らして資金を貯め込んでおり、その国際的購売力は円高で格段に高まっている。国内市場の拡大が望めない以上、企業はグローバル化するのが必然である。そのためのM&A、権益、各種経営資源の確保に今こそ円高のメリットをフルに享受すべきである。それは円高の抑制にも役立つことになる。

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