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第174回「混沌としてきた世紀の闘い」

2020年03月02日

株式会社マネーパートナーズ ホームページ寄稿     二〇二〇年 三月

 話がどう転んでも米中関係の推移が二十一世紀の世界にとって最大の関心事であることは間違いない。貿易摩擦についてはやっと第一段階の合意が成立したが全面解決には程遠い。他方ではファーウェイ問題を契機にした情報技術覇権をめぐる深刻な抗争が急浮上してきた。その他にも、南シナ海、東シナ海での睨み合い、サイバーアタック等々紛争の種子には事欠かない。

 しかし、最近の事態で非常に興味がありかつ重要なのは、米中双方がそれぞれ国内で、今迄のものとは一味違う問題に直面していることである。

 米国について云えば、それは今年十一月の大統領選挙の結果、米国という国の性格とその政策の方向性が大きく変化する可能性があることである。大統領選の共和党の候補はトランプで決まっている。二〇一六年にトランプが当選したのは、当時の有権者が民主党のクリントンが代表していた理想主義的、エリート的な「いい恰好しい」がその裏面に持っていた偽善性に反発したからだった。多角的自由貿易、人種融和、少数者の尊重、開放的移民政策、国民皆保険、同盟の重視、国際協調等々の「美しい」政策が実は美辞麗句であり米国はむしろそれによって実利を失い、力を削がれてきたという不信と不満である。

 第一期目のトランプは「アメリカ・ファースト」と「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」をスローガンにして、TPP・NAFTA脱退、減税、規制緩和等を実現し、ディールで実利を獲得する能力を実証した。一期を終えて、強固な岩盤支持層は健在である。しかし、内外で支持層が拡大したわけではない。毀誉褒貶は四年前と全く同じである。もし再選されたら、トランプは積み残した公約実現に注力するのか、新しいディールを目指すのか、判らない。

 それに対し、民主党の候補選びは混乱している。基本的にオバマ、クリントン路線への回帰を目指す「穏健派」と、社会民主主義的福祉国家を標榜する「革新派」の候補が争っている。目下のところ健闘しているのは七十七歳の老革命家的サンダースである。彼は四年前にもヒラリー・クリントンと争って敗れている。いささかドン・キホーテ的ですらあるサンダースが今再び人気を集めているのは、アメリカ社会の格差がますます悪化していることが最大の理由であるが、有権者に占める二十代から三十代のミレニアム世代の比率が高まっていることも重要な背景なのである。この世代は米国が冷戦に勝利し、情報通信と金融が世界を制覇した光と影の時代を生きてきた。影の部分を明るくするためには光の部分を暗くするべきだというのが彼等の主張である。つまり、持てる者の負担で持たざる者を救うのが社会の正義だと考え、そういう主張を一貫して行っているサンダースが、実利一辺倒のトランプよりも、現状容認的な穏健派よりも良いと思っている。

 もしサンダースが当選して本当に公約を実行すれば、米国という国は歴史的な変化を遂げることになる。彼の外交政策は明らかではないが、リベラル・デモクラシーと市場原理を体現する指導国米国はいなくなる。

 一方、中国も今迄にない問題に直面している。二〇一三年に共産党トップの座に就いてからの習近平の権力掌握のスピードはまことに驚くべきものだった。一方では軍政経等あらゆる分野での指揮権を一身に収め、しかも憲法改正によってそれを終身の制度にしてしまった。他方では、薄煕来や周永康などの強力な政敵を汚職の名目で徹底的に摘発してその息の根を止めてしまった。経済、軍事、外交、技術等あらゆる分野で米国を追う第二の大国の地位を確立した。南シナ海、東シナ海を内海として西太平洋への進出を望み、一帯一路構想でユーラシア大陸の盟主への歩を進めている。その威光は毛沢東、鄧小平等の共産党指導者を凌駕し、唐宋元明清等の古代帝国の君主達に匹敵するものになった。

 ところが、ここへ来て習近平は多くの想定内、想定外の難問に直面しているのである。その第一は成長力の鈍化である。中国は一九九〇年代以降二桁の成長を続けて世界第二の経済大国になった。しかし、何時迄も続けられる訳ではない。十年間で経済規模を倍にするためには年平均七%の成長が必要である。人口、環境、資源等の必然的な制約を考えれば、成長率が趨勢的に低下するであろうことは当然予想されたし、現に直近の成長率は五%台になっており、政府も成長政策の核心を量から質へとシフトし始めた。ところが、予想外だったのは米中貿易摩擦や、地方政府や国営企業の債務累積や、極め付きとも云うべきコロナウイルスの蔓延によって中国経済の成長力が深刻な打撃を受けたことである。成長しなくなったら中国はどうなるのか。習近平にとっては悪夢以外の何ものでもない。

 問題は成長鈍化だけではない。共産党独裁という中国統治の根幹にかかわるような出来事が次々と起こっているのである。新疆省でのウイグル人弾圧の実情が明らかになり、欧米での非難が一斉に高まった。香港で一国二制度を守れという、学生を中心にした市民の声がかつてない程に高まり、キャリー・ラム行政長官とその背後にある北京政府に対する反発が高まっている。台湾では自主を主張する蔡政権に対する国民の支持が高まり、早期統一をもくろむ北京政府との関係は緊張している。周辺諸国との関係は一帯一路構想やAIIBの融資で徐々に緊密化している面もあるが肝心の中華圏内で綻びが出てきているということなのである。国内で政府は高度なIT技術を駆使して全国民のプライバシーを把握しようとしている。思想、言論、表現に対する統制も強化されている。こうした風潮に対しては当然のことながら知識層を中心に反発・不満の声が出ている。共産党にとっては慎重な対応を要する事態であろう。

 というわけで、米中共に国内外に厄介な問題を抱えている。覇権をめぐる超大国間の世紀の闘いはいやが上にも複雑で混沌としたものにならざるを得ないのである。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。


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