株式会社マネーパートナーズ ホームページ寄稿 2018年 3月
去年の世界経済はインフレにもならず、不景気にもならないゴルディロック経済とか適温経済とか云われ、多少半信半疑ではあっても多くの国がそれなりにエンジョイした一年だった。しかし年が明けるとさすがにその魔法も息切れしたようで、金融市場には乱高下の不安が甦ってきた。
アメリカ経済は全体としては好調だ。トランプ政権の大型減税と規制緩和で企業部門は活況が続いており、それが投資、雇用、賃金に波及し、成長率は3%を超える勢いだ。しかし、好事魔多しと云おうか、大型減税による財政赤字拡大を嫌って長期金利が上昇し、FEDの政策金利引上げのスピードが早まるという思惑で株価が急落した。インフレ加速と貿易赤字増大でドルの実効相場は下落している。ドル金利の上昇は新興国経済にとっても不安要因だ。
中国経済は依然調整過程にある。鉄鋼・アルミなどの供給調整は概して順調に進んでいるが、最大の問題である企業と地方政府の過剰債務の処理は未だ道半ばである。指導部は借入れや投資の抑制に腐心してはいるが、小康社会実現のためには6~7%の成長を維持せねばならず、景気の腰折れや株価の暴落は許されない。手綱捌きはとても難しいわけである。
EUは2009年のユーロ危機を何とか乗り越えたが、移民問題、ポピュリズム問題は依然潜在しており、楽観はできない。ECBの出口戦略も微妙な段階にさしかかっていて、判断を誤まると市場の混乱は必至である。
日本は依然低成長に捕まったままである。悪くなっているわけではないが、良くもなっていない。成長率は世界最低の部類で、失業者はいないが給料は上らず、2%のインフレ目標は達成の目途も見えない。金利はマイナスでこれ以上下げようがない。期待に働きかけようと異次元の金融緩和をしたんだが、残念なことに期待が全く良くならない。だから投資も消費も増えないのである。
こう見てくると、現在の世界経済には2つの特徴がある。リーマン・ショックの時は皆が同じような打撃を受けたんだが、10年経った今はそれぞれの国の回復の度合や抱えている問題に違いが出ている。しかし、他方ではショック後に全世界的規模で行なわれた異常な金融緩和によって、今や世界全体がおしなべて記録的な流動性過剰、裏返せば債務過剰になっているということである。
過剰流動性とは利回りを求めて狂奔するリスクマネーである。それは資産バブルを生み、いずれ破裂する。米国とも中国とも違った局面にある日本経済は、両国で起る金利や為替相場や投資・消費の変動に受身で対処して行かなくてはならない。日本のゴルディロックは熱すぎるスープや冷たすぎるスープを飲む覚悟をしておかないといけないだろう。