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第240回 ~ドル安の終わりの始まり~

2017年04月12日

 氷があっという間に割れた。4月12日へと日付が変わる直前、110円を割れ、11月18日以来約5か月ぶりに109円台に突入した。要因は、何といってもシリア・北朝鮮をめぐる世界平和を脅かす懸念が高まってきたことに対するリスク回避行動だ。地政学的リスクという言葉は言い古されてきたが、この言葉は相場変動要因を説明するのにわかりやすい。ただ、個人的には、先週も書いた通り予定通りの動きであり、驚きではない。

 さて、問題はこの後であるが、今年末に向けてドル高円安にシフトすると考えている筆者にとって、ようやくドル安の終わりの始まりが来たとの思いだ。現在起こっていることを地球儀的にみると、まるで相場変動の源になる鬼を探し走り回っている鬼ごっこのようだ。相場は移り気、トランプラリーに飽きてきたところに、シリア爆撃のニュース、「それ!リスクオフ!」と飛びついた、というのが実情である。

 では、リスクオフでどうして円が買われるか、この問題をクリアにしていけば、おのずと今後の円相場が見える。為替相場は二国間の格差を表すもの。「高いところにお金は流れる」という真理でいえば、日米間では圧倒的に米国優位である。日本が買われる要因は、政治の安定性を背景とした地理的な遠隔地感だろう。トランプ大統領に比較した安倍首相のわかりやすさは安定感を求める投資家にとって重要な要素である。

 また、欧州の世界地図をみればわかるが、日本は欧州の混乱からは極端に東方へ遠く離れたまさに極東に位置する。そして何より大事な資金の流動性は世界の中で圧倒的に高い。危ない時のタンス預金としては真っ先に候補に挙がる。しかし、タンス預金はあくまでも一時的な避難場所。格差の拡大(金利差、成長力)、縮小(地理的安全性やトランプ政権の見直し)とともに円は売られていく運命にあると予想する。

 そこで重要になるのが、その時々に優先されるテーマの感知力である。それを見出すことが相場予想には必要であり、個人的には、それを探すのが楽しい。市場で明らかになっていることや噂になっていることもはずせないが、それ以上に重要なのは、水面下で動いていることである。行間や写真(例えば、シリア爆撃のテレビ画面をトランプ政権の主要閣僚が凝視している場面の席順)や、米中首脳会談での内容についての当事者や第三者(例えばティラーソン国務長官)の発言から読み取り、仮定やシナリオを立てることである。これこそがインテリジェンスであり、ポリティカルエコノミーの真髄である。

 今回の円高局面でもう一つ特徴的なことは、いわゆる円独歩高であり、すなわちドル安ではないといえることである。ドル指数でみれば、トランプラリーが始まった当選が決まり勝利演説した直後が98前後、ピークで103.80台(今年1月3日)まで買われた後、現在は100.60近辺である。シリア爆撃時には、ドルは上昇、まさに有事のドル買いともいえる相場アクションでもあった。3月は選挙、金融政策決定会合、利上げなどとイベントが続いたが、今月も日米経済対話、米国為替報告書の発表など、相場に影響のある材料が多い。この後も米国、日本、フランス、北朝鮮などからいたるところから鬼は登場する。

 しばらくは軍事政権化した米国に懸念して、ドルは不安定な状況が続く確率が高い。今後一週間の相場レンジは、ドル円は108.80-110.80円、ユーロは、対ドルでは1.0450-1.0700、ユーロ円は115.00-118.00と予想している。
(2017/4/12、小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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