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第258回 ~ドル上昇サインの出現~

2017年08月30日

 この1週間に飛んだブラックスワンは何羽だっただろうか。はっきりとその姿を確認できたのは29日未明の北朝鮮のミサイル発射だった。ただ、人にとっては米ジャクソンホールにも飛んできたと感じたかもしれない。マスコミやエコノミストがことさら悲観的な解説を繰り広げていることから、最近の為替市場では、飛んでくる鳥がすべてブラックスワンとみる人が多くなってきたように見える。ただ、筆者には、その鳥は実は黒(ドル安)でなく白(ドル高)だったのではないかと感じている。

 地域的には、その黒さは微妙に違いがあると思う。例えば昨日はアジア市場では、まさに真っ黒な鳥だったが、欧州ではだんだん色が消え、大西洋を渡ってアメリカ大陸に着いたときは白鳥になっていたと見える。黒と思っていたが、よく見ると白かったと、慌ててドルを買い戻した人が多かったのではないだろうか。ではこの色の差は何か。一つだけ見えることは、トランプ大統領に対する見え方の違いである。

 アジア、欧州とも、トランプ大統領自身の姿や政権能力、国民の評価、思い、支持率の実態は、映像やマスコミでしか見えてこない。まさに懸念されるトランプ政権の四大問題はスクリーンを通してしか見えていないということになる。それが米国では、隣にいる実像として身近に見えているのではないか。その為、最悪事態が起こる確率に対する思いが大きな違いとなっている、というのが筆者の見立てである。

 それが、ドル高、株高になって表れてきたのであろう。例えば、VIX(ボラティティ)指数である。昨日(8/29)は、オープンはいきなり窓空きの前日引け値(11.32)比で約18%上昇の13.41だったが、日中は徐々に低下、引けは11.70であった。

 そして個人的にもっと大きな注目点は、日々線と21日移動平均線との関係である。昨日のドル円の引け値(109.77円)が、21日移動平均線(109.75円)をわずかだが上回って引けた。これは、前回114.49円までドルが上昇した時の起点になった6月15日以来のことで、前日(6/14)のひげ付き陰線の後の長い陽線(1.60円)での21日線越えであった。

 今回も同じような展開で、前日(28日)のひげ付き陰線の後の長い陽線(1.64円)での21日線越えとなり、奇妙に一致している。今回の越え幅がわずか2銭なので、今日もう一日の確認が必要とみているが、今日、21日線(109.73円)を超えてNY市場が終われば、ドル円上昇軌道が再点灯、とみていいのではないか。そしてこの動きは今週末の雇用統計で確認できると期待している。

 さて来週9月5日から米国議会が再開する。トランプ大統領に関わる四大リスク(北朝鮮問題、政権内の人事の混乱からくる政策執行能力問題、人種差別問題、そして予算/債務上限と政府閉鎖懸念問題)がどのように進展していくか。また9月は欧米日の三大中央銀行の政策決定会合がある。筆者は、米国経済の堅調推移と、共和党を中心とする米国の良心を信じている立場から、年末に向かってドル高に推移すると予想している。いよいよ相場秋の陣が始まる。「木だけを見て森を見ず」とならないように身を引き締めている。

 今後1週間の相場レンジは、ドル底値固めを予想し、ドル円は109.20-111.20円と予想。一方ユーロは、ECB理事会(9/7)を前に、2年9カ月ぶりの高値の調整が入ると考え、対ドルでは1.1880-1.2080、ユーロ円は129.80-131.80円と予想する。

(2017/8/30、小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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