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第260回 ~ドル買いの見えざる手~

2017年09月13日

 9月に入って、予想通りの荒れ相場、ドル円は予想した通りの108円割れとなった。しかも、約10か月振りの107.29円を付け107円も割れそうになるほどのドル売りの嵐が強まるとは思っていなかったので、その勢いには驚いた。北朝鮮、ハリケーン襲来、米ドル金利低下とドル売り材料が拡大し、まるでパーフェクトストーム(複数の嵐が同時に襲う状態)が襲来したかのドル暴落であった。

 一方、円以外の通貨ではそれ以上に米ドルは売られた。ユーロドルは1.2092と2014年末以来のユーロ高、ドル指数は、91.13と約2年8カ月の低水準となった。また利上げしたカナダドルに対しては、1.2060まで、また豪ドルに対しても0.8125まで米ドルは売られ、それぞれ約2年4か月振りの米ドル安となった。

 しかし、ドル売りの勢いは今週に入って逆回転。さてこの背景は何か? 先週のドル売り要因が思ったほど悪化しなかったとの解説はあるが、個人的には、別な理由を考えた。ドル売りの材料が完全に解決したことでドル買いに転じたのであれば、何も迷うことはない。黙ってドルを買い進めればよい。しかし、現実にはドル高への転換は比較論で動いたのであり、絶対的な状況変化で動いたのではないとの見方である。

 そこで考えたのが、見えざる手、すなわち政治、が動いているとの判断である。筆者の経験では、明白な理由がないにも関わらず市場の流れが変化した時には、大きな政策変更が絡んでいることが多い。その場合、それを察知したヘッジファンドが先手を打って米国買いに転じる。今回のそのケースであろう。その大きなポイントは、ムニューシン財務長官の発言と読んだ。

 先週、何はともあれ、債務上限問題は先送りになった。もちろん、これは解決ではない。トランプ大統領お得意のチェリーピッキング(良いとこ取り)で、ハリケーン被害救済法案との抱き合わせで民主党と合意して12月15日までの引き上げを成立させた。10月からの2018年予算も暫定予算で当面の財政破綻は回避されたが、共和党からは、相談もなく大統領が独自に決めた、と批判の声が上がっている。

 その為、10月以降には、また議論がぶり返される可能性がある。北朝鮮問題も本格解決までには程遠い状態であり、このドル高もひと時の気休めに終わる可能性もある。しかしそれでもドル買いの流れはじわりじわりと沸き上がっている。その背景に筆者が注目しているのは、ムニューシン財務長官である。財務金融問題においてはトランプ大統領の代弁者であるに違いない。税制改革の年内成立に意欲を見せ、FRB議長指名問題についても言及している。長期的にはドル高が望ましいとの考えも保持していることから、米国の地位低下となることは容認できないとの信念があり、ドル安が進むことにはならないように歯止めをかけるに違いない。

 来週には、FOMC(9/19-20)と日銀(9/20-21)の金融政策決定会合がある。またドイツの連邦議会(下院)選挙(9/24)も控えている。日銀は10月の展望レポートを控えているので、今月は現状維持と予想しているが、米国からは、バランスシートの縮小スケジュールが発表されるとみている。一方利上げについては、12月の可能性は低くなっているとの見方が高まっているが、それまでの経済状況で再燃することもある。まずは今週の消費者物価(予想;前月比+0.3%)に注目したい。

 今後2週間の相場レンジは、ドル円は109.00-112.00円と予想。一方ユーロは、対ドルで1.1750-1.2050、ユーロ円は129.00-132.0円と予想する。
(2017/9/13、小池正一郎)

***来週は、筆者の都合により休載とし、次回は9月27日となります***

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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