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第267回 ~ノイズとトレンド~

2017年11月08日

 今週に入って、ドル円は114.73円まで買われ、今年3月15日以来のドル高水準となった。なかなか114.50円を抜けなかったが、「3度目の正直」というような感じで午前中に一気に114.50円を超え、いよいよ来たか! というような勢いもあった。

 しかし、すぐ失速、結局その日は113.70円割れまで売られてNY市場が終わり、日足ベースでも長い上ヒゲを付け、再び114円ばさみの展開に戻ってしまった。過去2週間のレンジで見れば、113.50円~114.50円での行って来いの繰り返しである。

 過去の経験では、3度目の挑戦で目標に達しなければ、「三度さっぱり」となり、当面はその水準(114.50円超え)を越えないことが多い。すなわちサイクル的に、ドル売り優勢の相場展開になり、テクニカル一辺倒で相場を読むなら、ここはドル売りで攻めることが戦略になる。

 しかし今回だけは少し様相が違うように感じている。相場に気迷いがあり、どんどんドルが売られていく強さが感じられないからだ。ドル買いとドル売りのどちらにも変わる可能性があるとの見方である。

 まさにこの相場観の相違は、世界中に起こっている変動要因を、一時的なノイズ(雑音)とみるか、解決まで時間がかかるトレンド(本質的、構造的)の変化と見るかに起因する。筆者は、一時的とみているので、取引姿勢は、「Buy on dip(下がって買い)」である。

 例えば、サウジアラビアの政情不安である。原油価格の上昇という形で、市場は反応した。昨11/7には、一時1バーレル59.69ドル(WTI先物)まで買われ、2年4か月ぶりの高値を付けた。60ドルを超えると、2015年6月下旬以来の高値となる。専門家によれば、今年中に60-62ドルまでの上昇はありうるとの見方が示されている。単に需給問題であれば原油価格の上昇は、物価高に波及しドル買い要因になるが、もう少し様子を見る必要があるかもしれない。

 一方で、拘束された王子のなかに、アラビアのバフェットとも呼ばれるアルワリード王子も含まれており、持ち株の処分がなされるのではないかと懸念されるとの声も出ている。2014年の後半に原油価格が100ドルから50ドル割れまで続落した時に、世界的に株価が急落したことが記憶にある。

 今回は原油価格的には逆パターンなので、同様なことは起こらないと考えているので、個人的には、これが世界市場に大きく波及するとは考えていない。ただ、持ち株量が半端ではないので、いざ事が起これば、株式市場に多大な影響を及ぼすことは間違いない、と警戒している投資家も世界にはいる。この点は頭の片隅に入れておきたい。

 もう一つ、米国の税制改革審議の遅れへの懸念も、ドル売り材料となっている。特にリパトリ減税への期待が大きい分だけ、本当に延期されると失望感は大きくなる。ただ、この真偽は不明なので先走ることはできないが、噂通りになれば金融市場への影響も大きいと考えられるので、その動向をしっかりと見極めていきたい。

 NY連銀のダドリー総裁の辞任予定発表も驚いたが、その影響は後任人事次第なので、まだ市場では消化していない。また米国の経済指標は、来週水曜日15日(小売売上高、消費者物価)までめぼしいものはないので、市場は、アジア歴訪中のトランプ大統領の発言に傾聴している。

 今後1週間の相場レンジは、ドル円は112.50-114.50円と予想。一方ユーロは、対ドルでは1.1480-1.1680、対円では、先週と同じく131.50-133.50円と予想する。
(2017/11/8、小池正一郎)


※当コラムは毎週水曜日の更新です(水曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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