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第282回 ~木しか見ないトランプ政権~

2018年03月07日

 着々と105円割れに近づいてきた感がする。自然渋滞の原因はやはり政治への不信感、不透明感。3月4日にドイツでは連立を問う投票、イタリアの議会選挙があったが、やはり本丸は米国トランプ大統領である。先週末のトランプ大統領の追加関税発言でその正体が改めて認識された。ビッグデータ的に言えば、「貿易戦争の幕開け」である。

 このトランプショックは、韓国南北会談の成果を受けて、落ち着きを取り戻したかに見えたが、その安堵感を打ち破ったのが、今朝のコーン経済担当補佐官の辞任発表であった。まさに来るべきものが来たという感じだが、これほど早く来るとは、いわば衝撃的な発表であった。日本時間の早朝、ニュースが出るとドルは全面安、ドル円は106.10円台から一気に105円半ばまで売られた。下落幅は過去に比べれば大きくないが、短時間での反応―まるで事故渋滞の発生―となり、やはり警戒信号である。

 コーン氏は、国家経済会議の委員長であり、経済担当大統領補佐官としてトランプ政権の経済政策の司令塔を務めている重要人物だ。追加関税反対の立場から、トランプ大統領と意見が合わず辞任のうわさも広がっていたが、それが事実となったことで、改めてトランプ政権の弱体化がクローズアップされた形だ。

 森(問題の本質)を長期的に見るコーン氏は、木(目先の損得問題)を刹那的に見るトランプ大統領に愛想をつかしたのではないだろうか。米国からは「ホワイトハウスはChaos(混沌)だ」と危機感をあおるコメントも出ているほど、まるで沈みかけている船から脱出する鼠が続出している状態に思える。

 今、市場の空気は、ますますドル資産回避の機運が高まってきたように感じる。このまま進んでしまうと、4月からのドル高見通しを持っている筆者も、考え方を変えていかなければならない。この流れが変わるには、米国発の政治に安定さを取り戻すことが必要だ。このままでは難しいことではあるが、一縷の望みは経済の好調さが維持されていることである。

 市場は次の材料待ちの状態で、それは明日8日からの日銀金融政策決定会合と今週末9日に発表になる米雇用統計だ。その予想は、非農業部門雇用者数は22万人(先月20万人)、失業率は4.1%(同、変わらず)、そして平均時給は2.8%(同、2.9%)となっている。

 今後1週間の相場レンジとしては、引き続き値動きのでる展開で、ドル円は104.50円~107.50円、ユーロは、対ドルで1.2300~1.2600、対円では129.00~132.00円と予想している。
(2018/3/7、小池正一郎)


※当コラムは毎週水曜日の更新です(水曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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