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為替大観

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第455回 ~115円への壁~

2021年10月27日

先週はついに114円台にのせ、節目と思われた114.55円(2018年最安値)も3日目の挑戦で突破、20日には114.70円までドルは買われ(円は売られ)た。2017年11月以来、3年11カ月ぶりのドル高・円安である。

しかし、次の節目と言える114.74円を超えることができないことで、その後3日間はドル続落、先週末22日には113.35円までドルは低下(円は上昇)した。いわゆる自律調整と言えよう。25銭足らずの陰線(ドル低下)となった5日目を除いて、ドルは8日連続の上昇を続け、短期(21日)移動平均線との乖離も2.3%以上と拡大しており、ポジション調整が起こってもおかしくない日柄であった。直前に乖離幅が拡大した9月末には、乖離率1.75%程で反転していたので、相場の流れとして想定できる展開であった。

この動きは、クロス円(米ドル以外の通貨の対円相場)でも見られた。ドル円が114.70円を付けた10月20日に高値を付けたのち、すべての通貨は売られた。ちなみに英ポンドは2016年6月のブレグジット(英国のEU離脱)投票以来の高値158.22円を付けた後、今日は157円割れ、カナダドル(高値93.02円)、スイスフラン(同124.55円)はそれぞれ2015年以来の高値を付けた後、下落に転じている。このように相対的に、円は価値を取り戻しているが、円の独歩安の状態ははまだ続いている。

では、この円安の状態がどこまで続くか、であるが、以前にも書いたが「高い所にお金は流れる」理論で考えれば答えはある意味はっきりしている。その高い所というのは「信用力(格付け)」、「成長力(価格)」、「収益力(金利)」だが、日本はいずれも高い位置にあるとは思えない。

これまでは信用力で1,2を争っていて、リスクオフ(リスク回避)事態発生には疑いもなく円は買われていた。今はどうであろうか。筆者の耳には、特に自民党総裁選以後は日本政治の評価も下がっているとの声が聞こえている。キーワードは「改革」である。岸田総理は、総裁選前には立候補当初は改革魂を感じられたが、残念ながら、首相になってからは、自民党の大物リーダーの路線を引き継ぐような予定調和的になっている。今回の衆議院議員選挙が信用力回復に対しその試金石となる。

一方、成長率、収益力については既に報じられている通り、GDPは増えず、金利も長くゼロ金利、この点では国(=円)を買い進められない。円が魅力を増す(=強くなる)ためには、この三つの観点で少しでも高さを挙げていかなければならない。通貨(相場)は相対的な関係で決まるので、相手国の数字に勝らなければ、円が強くなることは難しい。

その一つが成長力。米国で第3四半期(7-9月)のGDP成長率が明日28日に発表になる。市場のコンセンサスが2.0~2.4%(前年同期比、年率)で、前期(第2四半期)の6.7%より大きく下げている。見通しとして、よく参考にされるアトランタ連銀のGDPナウは0.5%(10/19現在)の低い予想だ。米GDPの約7割を占める個人消費の貢献度が低下していることが大きな要因と思われる。

筆者が参考にしている米エコノミストの資産では、個人消費の貢献度は約+0.6%と低下、前期の貢献度の+6.7%に比べ大きく低下している。2020年第2四半期は、新型コロナショックで消費が大きく減退し、第3四半期に盛り返したことを考えれば、当然の数字とも判断されるが、低い数字の予想の中で、少しでも上向きの結果が出れば、ドル高は再燃する(逆も真なり)。

さて、今後2週間の相場見通しは、ドル円は来週のFOMCまではドル高の調整が続くと予想するがFOMCでテーパリングが決定すると考えドル高が再燃、112.80~115.00円と予想。なお、日銀の会合(27-28日)では、展望レポートが発表になるので、経済・物価見通しには多少の改訂があるかもしれないが、金利や量的緩和政策は現状維持を予想している。一方ユーロは、ECBの会合も現状維持を予想。対ドルで1.1450~1.1700、また対円では131.00~134.00円と予想。英ポンドは,BOE会合でタカ派基調が示され1.3600~1.3900とポンド高を予想する。

(2021/10/27, 小池正一郎)

(注)来週(11月3日)は休日の為、休稿となり、次回は11月10日となります。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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