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市場養生訓

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第825回

2020年08月04日

 ビクともしない。香港ドルの為替レートのことだ。米ドル香港ドルの為替レートは変動幅のほぼ下限(香港ドルの上限)に張り付いたままだ。米ドル香港ドルは7.75から7.85の変動幅内で動く。変動幅を超えるような動きに対しては為替の市場介入や金利操作で変動幅の維持に努める。それでも無理な場合は変動幅の拡大や中心レートを変更して為替レートの水準を変える。
 香港のこうしたドルにペッグする相場のシステムは1983年以来続いてきた。その間香港の中国への返還、アジア通貨危機、人民元の固定相場制から管理変動相場制への移行など、香港の為替システムに重大な影響をもたらすビッグイベントもあった。それでも香港のシステムは基本的に維持されてきた。
 だが今回、香港の基盤である一国2制度が揺らぐ国家安全法の成立・施行は為替のシステムにも大きな動揺が波及すると思われた。香港の国際金融センターとしての役割の低下、人材の流出、それに伴う大量の資本流出が見込まれたからだ。しかしこれまでのところ変動幅の変更に繋がるような動きは皆無だ。それどころか香港ドルの下落(米ドル香港ドルの上昇)は全く見られない。
 香港ドルの下落のカギになるのは資本流出の大きさだ。そしてそれが継続して起きると香港ドルの下限(米ドル香港ドルの上限)を突破するような勢いに繋がる可能性が出る。
 では今回、資本流出は起きてないのだろうか。
 ロンドンの不動産は中東のオイルマネーや世界の富豪などによる投資対象として位置づけられるが、その中でも最近は中国と香港からの投資マネーが最も活発だ。国家安全法施工の可能性が出てきてから香港からの投資も増えている。香港の不動産を売ってロンドンの不動産を買う。こうした取引が多くなれば香港の不動産価格は下落する。そうなれば香港の金利低下圧力も増す。
 だが実際には香港の不動産価格は今のところ安定している。家計所得の中間値の20倍以上になる香港の住宅価格の高さに変わりはない。
 それは香港へ流入する資本が穴埋しているからだ。特に中国からの資本だ。
 香港ドルのレートが下落しない要因としては、こうした資本流入のほかに、当局が香港ドルの金利を高めに設定していることがある。これは米ドルと比べて高めということだ。香港では自由な資本取引を維持する中で為替の安定を優先するので、金融政策は基本的に米国に追随する。つまり米国が利下げをすれば香港も同程度利下げをする。それを現在は米国よりも金利を若干高めに維持している。そうすることで香港から米国への資本流出を抑制し、香港への資本流入を促すようにしている。こうした政策が今のところうまく機能している。為替レートを見る限り、香港のシステムは安定している。
 ではこうした安定は今後も続くのだろうか。続かないとしたらその契機は何か。
 一つは香港からの人材流出が激しくなる、それに伴い不動産価格の下落が大幅になる。もう一つは中国からの資本流入の減少だ。中国経済が変調をきたし人民元が下落し、資本不足になる。三つめは米国の香港自治法も実行だ。中国の銀行に対する金融制裁だが、米銀との取引を禁じる内容だ。ドル経済圏からの封鎖になる。そうなれば香港ドルのドルペッグ制への影響は避けられない。
 いずれの可能性も今のところ小さいが、あり得ない話ではない。
 

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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