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市場養生訓

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第662回

2017年03月14日

 ドル金利が上昇すれば米国以外の国から資本流出が起こり、その国の通貨の対ドル為替レートは下落し、大抵は外貨準備が減少する。これは一般論。現実は様々だ。

 中国のように外貨準備が大きく減少した国もあれば、日本のようにあまり変化のない国もある。外貨準備が減少するのは、主に当局がドル売り自国通貨買いの市場介入の結果だが、固定的な為替制度を採用している国は、為替レートを一定の変動幅で維持するために市場介入の頻度が増す。変動相場制を建前ではなく完全に採用していれば通貨安は進むが、外貨準備は減少しない。

 こうした中で外貨準備を増やしている国もある。例えばスイスだ。昨年から今年にかけて増加傾向だ。特に2月は大きく増えた。スイスフラン売りの市場介入のためだ。スイスはスイスフラン高を抑制するため、しばらくユーロスイスフランの為替レートの下限を1.20で固定していたが、2年ほど前にその制度を止めた。その後は1.10前後で比較的安定的に推移していたが、昨年後半あたりから、スイスフランの買い圧力が増してきた。

 BREXITやフランス、オランダなどでの選挙に関する政治的リスクの高まりのために安全通貨、避難通貨としてスイスフランの需要が増加したためだ。それでSNB(スイス中銀)はスイスフラン高抑制のための介入を増やしている。

 トランプ政権が嫌悪する通貨安介入だが、スイスは非難されるわけではない。ユーロはマルクの代理通貨だとしてドイツが非難された。もしドイツマルクが存在していればスイスフランよりもドイツマルクに向かう資金の方がはるかに多いはずだからだ。

 新興国の中では中国のように大幅に外貨準備を減らした国もあるが、総じて今回の米国の利上げ局面では今のところ大きな影響が見られない。FEDが量的緩和の縮小を始めたときや、一昨年の利上げ局面と比べると、為替レートも外貨準備額の変動も穏やかだ。

 新興国はドル建て負債が多く、経済構造も浅いのでドル金利上昇の影響を比較的ダイレクトに受けやすいとの一般論から見れば変だ。

 なぜか。考えられるのは、新興国サイドの要因としては、以前に比べて経済構造が深くなり、ドル金利変動の影響度合いが小さくなった。短期のドル資金の借り入れに大きく依存して、ドル金利上昇がすぐに通貨安、借入金の増加、返済困難、資本流出、通貨安の悪循環に結びつく構造が変化した。

 米国サイドの要因としては、ドル金利上昇の持続性に対する疑問やトランプ政権に政策に対する不確実性などだ。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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