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市場養生訓

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第686回

2017年09月05日

 市場のレートはその参加者の行動によって決まっていく。金利でもなければ戦争でもない。ドル金利の引き上げをしても大半がドルを売ればドルは下がる。朝鮮半島で戦争が起きて大半が円を売れば円は下がる。したがって市場参加者がどのように行動するかがポイントになる。

 但しそれは特定の市場参加者ではない。どんなに大口の市場参加者でも市場全体から見れば小さな存在だ。短い間なら影響を与えられるが、トレンドとして市場を動かすことはできない。

 それでも特に大きな資金を動かす市場参加者は彼ら自身が動かす資金規模以上の影響力を持つ。他の市場参加者がその行動を注目し、追随者が出るからだ。

 ノルウェーの国家ファンド(SWF)は9、900億ドルの運用資産を持つ世界最大規模のファンドの一つだ。北海油田から上がる原油収入を蓄えて将来原油が枯渇しても国民が困らないように運用収入を確保することを目的に90年代半ばに創設されたファンドだ。

 現在、運用益の一部は毎年の予算に組み込まれるので、運用成績は財政にとっても重要だ。運用成果のキーになるのがポートフォリオの組み方だ。

 金利の高い時代は債券の運用を多くすれば比較的低リスクで安定収益を確保できたが、低金利の時代になるとそうもいかない。ノルウェーのSWFも最初のうちは債券100%だったが、次第に債券の割合を減らし、株などのリスクの高い割合を増やしてきた。債券60%、株など40%の時代が続いた後、債券40%、株など60%に変化させて現在に至っている。

 そして今、株などを70%に増やそうとしている。債券をさらに減らすわけだがその中身は、社債を売却し、円や新興国通貨建ての国債を減らし、ドル、ユーロ、ポンド建ての国債だけに絞ろうとしている。こうした提案が運用責任者から財務省に提出された。

 世界の外貨準備の運用者は円の運用を増やす傾向が、IMFの外貨準備の通貨別内訳のデータから読み取れるが、ノルウェーのSWFは異なった運用方針のようだ。もっともこれは債券だけで株には当てはまらないのでSWFが円や新興国通貨のポートフォリオから全面的に手を引くわけではない。

 それにSWFの提案書は昨日提出され、外貨準備のデータは今年第一四半期までのものだ。タイミングとして北朝鮮のリスクなどは前者には含まれ後者には反映していないはずだ。

 いずれにせよアジアの緊張のリスクをどう計るかは中長期の運用者にとって運用成績を左右する問題なのかもしれない。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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