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市場養生訓

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第687回

2017年09月12日

 実は人民元は円に代わって避難通貨、安全通貨の役割を果たしていた、と言う人がいたら信じるべきだろうか。

 確かに人民元の対ドルレートは北朝鮮の問題が緊張を深めるのにあわせて上昇してきた。そして昨日、一転人民元は売られた。他のリスクオフの資産と歩調を合わせてだ。

 上空をミサイルが飛び、避難訓練をしている国の通貨よりも仲介者として話し合いを主張する国の通貨の方がはるかに避難通貨、安全通貨としてふさわしい、と考える市場参加者がいても不思議ではない。

 人民元をSDR(IMF特別引き出し権)の構成通貨に加えることを強力に進めた中国当局が、ドルや円と同様、人民元に避難通貨、安全通貨の役割を付与させようと望むのは当然だ。それも円に代わって。

 しかしそれは将来像としては可能でも今の現実でない。SDRの構成通貨はIMFが決めるが、避難通貨、安全通貨は市場が決めるからだ。IMFは政治的なバイアスがかかるが市場はそうはいかない。

 その際のポイントは、いつでも相当な金額の金融商品を素早く売買できる市場があるか、つまり市場の流動性が十分かどうか。法や規則が頻繁に変わったりせず、整備されているかどうか、などである。

 その点では人民元の現状はまだまだだ。人民元の国際化の動きも一歩後退二歩前進から最近では一歩前進2歩後退のようなペースになっている。

 昨日人民元が売られたきっかけは為替先物取引に対する規制の緩和だ。人民元の売りを抑制するために準備預金を課していた。

 人民元は対ドルで今年になって下落基調から上昇に転じた。資本流出規制もあり、ドル安基調も後押しした。米国との貿易交渉で人民元高基調は好都合だ。

 それで昨年の下落幅くらいは戻した。そこで上昇一辺倒の政策を緩め、しばらくは相場の安定を図るつもりなのかもしれない。来月は共産党全国代表大会もあるからだ。

 それにしても人民元が避難通貨、安全通貨になる日がやってくるかどうかと問われれば、イエスだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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