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市場養生訓

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第697回

2017年11月28日

 為替レートには様々な変動要因がある。政治や経済上の大きな変化は投機為替を誘発することで為替レートは変動し、日常的な経済活動から生じる実需為替は日々の為替需給に大きな偏りがある時に目立った変動要因になる。

 だがこれと言って大きな変動要因がない時は金利差が効くことが多い。この一般論に従えば現在はドル高が進行しているはずだ。

 ところが実際はドル高の進行はなく、逆にドル安気味だ。なぜだろう。

 市場で指摘されているのは漠たる不安だ。それは米国経済の先行きについてであり、インフレ率の先行きについてであり、金融政策の先行きについだ。

 その根拠としてはイールドカーブ(利回り曲線)のフラット化が挙げられる。イールドカーブは短期が低く長期が高い順イールド、短期と長期があまり変わらないフラット、短期の方が長期より高い逆イールドの三つの形状がある。

 普通は順イールドのことが多い。将来景気が回復し資金需要が旺盛になり、金利が上昇するとの見方を反映している。一方、将来景気の悪化が予想されるときに逆イールドの形になることが多い。将来短期金利が低下するとの見方を反映している。フラットは景気が上向かず低迷するとの見方を反映するが、逆イールドの前段階と見ることもできる。

 現在の米国では2年債と10年債のイールドの差が縮小してきて60ベーシスポイントを下回る水準になっている。フラット化に向かっているわけだ。

 ただイールドカーブのフラット化はこうした景気や金利に対する見方の反映だけでなく、財務省の資金調達計画の変化も反映している。それは短期の資金調達の比重を増やしたことだ。これは技術的な要因で景気の見方とは関係ない。

 確かにイールドカーブの形状をみてドル売りに動く市場参加者はいる。しかし私は、金利差が特に何も大きな要因がない時に静かに為替レートに効いてくるのと同じように、静かに進行している要因があると思う。

 それは外貨準備や決済通貨に使われるドルの比重の低下だ。ドル基軸通貨体制が静かに崩壊に向かって長い道のりを歩み始めた可能性がある。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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