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市場養生訓

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第711回

2018年03月13日

 米国の雇用統計は世界の経済統計の中でも市場で最も注目される統計だ。しかも息が長い。サザンオールスターズや中島みゆきみたいなものだ。他の統計は例えば経常収支や消費者物価指数にしても最も注目される時代が何度かあったが継続はしていない。TICデータ(米国の対内証券投資状況の数字)のように一時代だけのものもあった。

 雇用統計と言っても80年代までは失業率であり、以降はNFP(非農業部門雇用者数)が注目の中心になった。ただ近年では再び失業率にも関心が集まり、最近は賃金の統計も注目を浴びるようになってきた。これは米国の場合雇用の改善が金融政策の目標の一つになっているからであり、市場は金融政策の手掛かりを探るために雇用統計を注目してきた。

 先週の雇用統計ではNFPが予想を大きく上回り、労働参加率が上昇した中で失業率は前月と同じだった。だが賃金の上昇が前月ほどではなかった。

 こうした中でFEDの地方連銀総裁の一人は年4度の利上げはインフレ率を押し下げ景気回復にも悪影響を及ぼす見方を示した。予想以上の賃金の上昇を示した前月の統計ではインフレ率上昇の見方が強まり、FEDの中でも従来の年3回から4回の利上げを見る人が増えていることに対するけん制だ。

 直近の金融市場の見方はどうかというと、フェドファンドの先物レートから推計する利上げの可能性では、3月、6月、9月の年三回それぞれ0.25%の利上げになっている。12月に4回以上の利上げを見るのは3割ほどだ。

 結局のところ雇用は改善しているが賃金はそれほど上昇せず、インフレ率も抑えられている状況が続くとの見方と、雇用の改善は近いうち賃金、インフレの上昇に繋がるとの見かたのせめぎ合いだ。

 ただ前者の見方が現実化した場合、雇用統計と金融政策の結びつきが不明瞭になり、雇用統計に対する市場の注目度は従来より低下するかもしれない。
 

※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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