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市場養生訓

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第823回

2020年07月21日

 中央銀行の市場介入と言えば、為替市場では効果的なこともあれば、そうでないことも少なからずある。だが債券市場での市場介入は違う。
 そもそも中央銀行による長期金利のコントロールは短期金利と違って難しいと言われた。だが日銀がイールドカーブコントロールを政策の柱の一つにしてから長期金利は低位安定するようになった。2016年に導入した政策は長短金利の操作をおこなうもので、短期は日銀当座預金の一部へのマイナス金利(0.1%)、長期は長期金利の代表的指標である10年物国債金利が0%前後になるように操作する。具体的には長期国債を買い入れることにより実行する。
 長期金利の低下傾向は日銀が量的金融緩和政策の一環として長期国債を買い入れることにより進んだ。今や日銀の国債保有残高は全体の半分近くにも及ぶ。
 こうした状況はECB,BOE,FEDなどの中銀が政策を実行する他の主要先進国も同様だ。中銀の大量の国債購入で長期金利(10年物国債)はゼロ%台あるいはゼロ%前後で低位安定している。イールドカーブコントロールを政策の柱の一つとして謳ってはいないが、事実上のイールドカーブコントロールとの指摘もある。
 このように債券市場の介入は中央銀行の意図が反映されている点で成功している。
 一方為替市場はどうだろうか。
 近年ではスイス中銀(SNB)の介入が頻繁にあったが、全体として成功しているとは言い難い。スイスフラン高を防ぐための介入でスイスフラン売り、ユーロ買いの介入が専らだが、ユーロスイス1.20のフロアを撤廃した後もスイスフラン高基調は収まらず、スイスフラン売りの介入を時々実行している。直近では1.07台だ。
 主要先進国での介入は10年近くない。新しいものでも東日本大震災の時の日銀など先進国中銀による円売りドル買いの介入にまで遡る。この時は成功した。円高が反転した。
 最近では為替の市場介入は避けるべき政策とみなされている。自国通貨を下落させて輸出競争力を高めることを意識的にやることで通貨安競争に繋がる可能性があるからだ。そうした国に対して米国は通貨操作国として報復する可能性を明らかにしている。
 為替市場での介入がうまくいくかどうかのポイントは二つある。

 一つは介入金額が大きいことだ。市場取引金額に比べて相対的に十分大きな金額であればそれだけ効果は高い。日本が2000年代初めに単独で巨額介入を継続したが、その例だ。
 もう一つは、国際協調だ。先の東日本大震災の時は日銀の単独介入でなく各国の協調介入だった。各国が日本の政策に理解を持ち協調した。その場合、介入金額は大きくなくても効果を発揮することが多い。
 さて今後主要先進国の為替市場で介入が起こる可能性はあるのか。二つの可能性が考えられる。
 一つは、ドル売り介入だ。米国の貿易収支の改善が進まず、景気回復も芳しくなく、金利もインフレ率も低位で収まっている状況で、大統領再選の見込みが薄くなったトランプ政権が、窮余の策としてドル売り介入を実行する可能性だ。FEDは乗り気ではないだろうが、介入は財務省の管轄だ。その場合協調介入はまとまらず、単独介入になる。
 もう一つは、ドル買い介入だ。コロナの影響が米国経済に想像以上の打撃を与え、ドルの下落が加速する。米国債が売られ、世界の外貨準備に占めるドルの割合が50%を切る。政治、軍事、外交、など各方面でドルにネガティブな要因が続き、ドルが急落し。市場は大混乱する。この場合は各国のドル買い協調介入の可能性がある。
 

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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