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市場養生訓

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第848回

2021年02月02日

 米国のGameStop株の話題が世界を席巻した。それは今年になって1600%以上株価が上昇したからだけではない。先週は有力なヘッジファンドが白旗を上げて大きな損失を実現した。個人のトレーダーが集団で彼らを追い詰め勝利をもぎ取ったのだ。
 この「事件」を見る視点は三つある。一つは、蟻=個人が巨象=ヘッジファンドを倒した点だ。ヘッジファンドをウォール街の象徴と見て、彼らに一矢報いたことだ。金融危機以降広がりを見せる反ウォール街感情がベースにある。個人トレーダーの中には金融危機を起こしたウォール街に対する報復だと明言する者もいる。Occupy Wall Street運動に連なる系譜だ。民主党左派の有名な下院議員が、個人の取引を一時停止したブローカーに対して批判したのにもそうした背景が伺われる。
 もう一つはテクノロジーの利用だ。これまで金融機関が独占してきたテクノロジーを個人が広く利用することで大きな力になる点だ。今回は個人トレーダーがSNSを利用して情報交換をすることで共同歩調をとった。ショートポジションのヘッジファンドをターゲットに買い向かい締め上げた。実際にはコールオプションの買いを多用した。
 変動幅が大きな市場では時に損失限定が難しくなる。その点オプションの買いは最大損失がオプション料に限定される。さらにコールオプションを売った側の金融機関はレートが上昇するに従いヘッジ額が増えるため、現物株を買うことになる。そのため買いが途切れずショートにした側は締め上げられるような感じになる。
 三つ目はこうした現象が市場バブル崩壊の前兆との視点だ。個人がヘッジファンドを倒すような異常事態は実体経済と離れた金融市場の特徴を反映するもので、個人もいずれ損失が損失を招くような局面に巻き込まれる。ただ個人が借入に大きく依存していない限り、個人の損失は金融機関などには波及しない。その点では金融システムのリスクに繋がる可能性は低い。
 GameStop株で成功を収めた個人トレーダーは他の株にも手を出しているが、銀取引にも参入した。そのため昨日は銀価格も高騰したようだが、為替市場でも同様なことが起こるのだろうか。
 為替市場ではショートスクイーズ(ショートポジションの締め上げ)は日常的だ。トレーディングの戦略の一つでもある。特に取引量の比較的少ない通貨、あるいは取引量の少ない時間帯には比較的有効だ。
 金融機関同士で情報交換しながらショートポジションの積み上がりが目立つ市場参加者をターゲットに買い上げてショートスクイーズを起こさせるのだ。
 ただある事件を機にこうした戦略をとるのは難しくなった。ロンドンフィクシングを巡るレート操作事件だ。金融機関のディーラーが談合してレートを操作したと糾弾され、金融機関とディーラーは罰を受けた。
 今回のGameStop株を巡る売買でも個人が談合してレート操作を企てたとの見方もあるが、当局の調査で犯罪性が指摘される可能性は少ないようだ。個人と金融機関では操作の意図と実現性に大きな隔たりがあるのだ。
 いずれにせよ今回の出来事は新時代の個人トレーダーのポテンシャルを示したものだ。取引規模が株に比べてはるかに大きい通貨の市場では個人がレート操作できるほどの力を発揮するのは難しいように見えるが、個人取引が拡大していけば同様な出来事が起きても不思議ではない。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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