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市場養生訓

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第854回

2021年03月23日

 君子豹変し過ぎ。トルコのエルドガン大統領の土曜日の豹変は市場に大きな衝撃を与えた。過ちを認め、自説に固守せず柔軟に状況に対処する本来の君子像とはかけ離れたものだ。
 木曜日に2%の利上げを決定し、政策金利を19%にした中央銀行総裁を土曜日に首にした。インフレ抑制のために利上げを繰り返し、下落トレンドにあったトルコリラを反転させた総裁をわずか4か月で追い払った。この2年間で3人目だ。
インフレ抑制のためには金利を下げる必要との特異な認識を持っていた大統領が、自らの方針に沿った政策を実行してきた娘婿を失脚させてまで迎えた総裁だ。大統領は認識を改めたと思われたが、依然として自説に固守していることが今回わかった。新総裁はインフレと金融政策の関係について大統領と同様な見解を持つ元国会議員だ。これだけでもリラの先行きは暗い。
 ドルトルコリラは先週木曜まで7.50割れ水準で推移していたが、リラの予想を超えた利上げで7.20割れまでドル安リラ高が進んだ。ところが土曜日の決定を受けた週明けの市場ではリラは一時15%ほど急落した。8.30を超えた。現在は少し落ち着き7.84台で推移している。新総裁がすぐに利下げはせずに来月の会議での金融政策の決定を明言したからだ。少なくてもそれまでは政策金利は19%のままということになる
 インフレ率は現在16%近くで高い水準が続くが、これまでの高金利とリラ高がいずれインフレ抑制に寄与するとの見方もある。ちなみに中銀の年末のインフレ目標は9.4%だ
 今回の決定がトルコにとってまずいのは市場環境にもある。つまり市場のドル高基調だ。ドルの長期金利は年初から上昇基調で新興国通貨全般に対してドル高傾向にある。その中でリラ自身の大きな下落要因が加われば下落の拍車がかかる可能性が高い。
 では今後予想されるリラ下落に対して中銀を含めた当局はどんな対応策があるのか。一つは市場介入だ。ドル売りリラ買いの介入だ。だが介入の原資となる外貨準備が十分でない。これまでも短期の外貨借入などで急場をしのいできたが、それも市場に見透かされリラ売りの抑制効果は一時的に終わった。もう一つは為替取引規制だ。持ち高規制などで物理的にリラ売りの額を抑える。それに特定の金融機関の取引停止などの措置を講じたことがある。だが効果は限定的だ。三つめは資本取引規制だ。資本流出規制はリラ売りの抑制には効果があるが、規制を嫌う海外からの資本が円滑に流入しなくなったら元も子もない。トルコは経常収支の赤字国であり、構造的に円滑な資本流入を必要とするからだ。対外借り入れの返済もある。今年は1800億ドルの外貨債務の借り換えが予定されている。
 つまりトルコにとって投資家の信頼を維持することが重要なのだが、今回の決定は投資家の信頼を裏切るものだ。
 ではどんな問題に発展する可能性があるのか。
 通貨危機の発生と波及だ。リラ安が構造的になれば、トルコだけに留まらない可能性が出てくる。具体的にはバルカン諸国や中東、そこから東欧、ロシアそして新興国全般への波及だ。
 そうならないためにはその前の段階でIMFなどの国際機関からの支援や外国からの借り入れを求めることだ。外国と言ってもその場合、外貨が潤沢であるだけでなく政治的野心がある中国の可能性が高い。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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