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第627回 依然、ドルの下値は限定的と見られる

2018年05月28日

 「“不規則発言”で市場を振り回すのはいつものクセ」、「過激な発言や脅しを交渉のツールに使う単なる“ハッタリ”にすぎない」などというのが市場における最近のトランプ大統領評。よって、今回「米朝首脳会談の予定を中止する」とした米大統領の行動というのも当初から「見せかけだけ」と見る向きは少なくなかった。
 結局、米大統領は今後の北朝鮮との首脳会談については、当初の予定通り6月12日に開催することを視野に入れている、協議が継続されていることを明らかにした。北朝鮮側も開催には意欲的なようで、すでに焦点は朝鮮半島非核化に向けた行程表づくりの段階に入っているといってもいいものと思われる。

 少し振り返れば、先週は主に米中間の通商摩擦と米朝間の首脳会談に関わる米大統領の様々な発言によって市場のリスクオフ・ムードが強まり、ドル/円は週初21日のNY時間入り後から一貫して右肩下がりの展開を続けることとなった。
 もちろん、21日に一時111.40円まで上値を伸ばしたドル/円には目先的な高値&スピード警戒感が募っていたことから、連日のごとく発せられる数々のトランプ発言が目先的な利益確定の格好の口実とされたようなところもあろう。
 前回更新の本欄でも述べていたように、もともと足下のドル高には目先的なスピード警戒感や過熱感が募ってきていた。前回は「ドル/円で言えば、なおも2015年6月高値と2016年12月高値を結ぶレジスタンスライン(=トライアングルの上辺)は一旦上値を押さえられるところとなるだろう」と述べたが、実際にドル/円はトライアングルの上辺に到達する以前に一旦反落することとなった。
 先週24日には一時108.96円まで下押す場面もあり、とりあえずは3月23日安値から5月21日高値までの上昇に対する38.2%押し(=108.82円)の水準付近まで調整した格好ではある。先週末(25日)の段階で北朝鮮情勢を巡る地政学リスクが一旦後退したこともあり、基本的に当面のドル/円は底堅く推移する公算が大きいと見られる。
 ただ、週末1日に5月の米雇用統計と同ISM製造業景況指数の発表を控えていることから、上値もやや限定されたものになりやすいと見ておく必要はあるだろう。

 一方で対ユーロでのドル高には、なおも歯止めがかかっていない。もっとも、これはドル高というより「ユーロ安」なのであって、それは主にイタリアとスペインの政局を巡る不安が市場で台頭していることに因る。
 既知のとおり、イタリアでは極右の「同盟」と左派色の濃い「五つ星運動」という左右両極やEU懐疑派の連立政権を樹立する運びとなっており、「結果的に南欧発の欧州リスクが再燃しかねない」との不安が市場で強まっている。また、スペインでは最大野党の社会労働党と中道右派シウダダノスが、それぞれラホイ首相に対する不信任動議を準備していると報じられており、相次いで噴出する南欧の政局不安が市場のユーロ売りを加勢する格好となっている。
 すでにユーロ/ドルは31週線と62週線をすんなりと下抜け、先週末時点では一目均衡表の週足「雲」上限をも下抜ける動きとなっている。さらに、目下は月足「雲」下限まで下抜ける動きとなっており、テクニカル的にもユーロ売りが加速しやすい状況となっている。当面の下値の目安は、一つに昨年11月安値の1.1554ドルであり、同水準をもクリアに下抜けると、次に昨年1月安値から直近(今年2月)高値までの上昇に対する50%押し=1.1448ドルあたりが意識されるようになる可能性もあると見られる。
 押し目買いのチャンスをうかがうとすれば、それは「まず4月19日高値と5月14日高値を結ぶレジスタンスラインをクリアに上抜けてから」ということになるだろう。
(05月28日 08:50)


※当コラムは毎週月曜日の更新です(月曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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