先週3日、1週間半ぶりに取引を再開した上海総合指数は、春節前の1月23日終値比8%安の水準で取引を終えた。強烈な下げではあったが、まずこの時点で市場は「大よそ想定していた通り」と受け止めた模様である。結果、翌日以降は週末までジワジワと値を戻す展開となり、総じて市場に安心感をもたらすこととなった。
もちろん、その背景には中国人民銀行による大量資金供給の効果や中国政府による一段の景気刺激策に対する期待の高まりというものがあった。さらに、ウイルスに効く可能性があるワクチンの開発に関わる報道も幾つか取り沙汰され、それを市場はやけに(やや身勝手なほどに)ポジティブなものとして受け止めている。
古今東西、市場が反応する多様な材料のウエイトは個々に異なるものだが、今はとにかく新型コロナウイルスがすべてと言ってもよかろう。おかげで、平時なら大きく反応したはずである1月の米雇用統計の結果に対する市場の反応も限られたものとなった。
米雇用統計の発表後に少々ドル/円が下押す場面も見られていたが、それは週末のポジション調整によるところが大きいと見て良いものと思われる。なにしろ、先週は週を通じてドル/円が基本的に右肩上がりの展開を続けていた。まして、土日で市場が閉まっている間も新型コロナウイルスの感染拡大は止まってくれそうにないわけであるから、週明け以降の展開は非常に読みにくく、ポジションを抱えたまま週を跨ぐことに抵抗感を覚える向きも少なくないのだろう。
なお、1月の「米失業率」は若干上昇したが、それは主に「労働参加率」の上昇がもたらした結果であると考えられる。一方で「平均時給」は前年同月比+3.1%と力強く伸びており、非農業部門雇用者数の大幅な伸び(22.5万人増)とも相俟って、今後の米小売売上高の伸びを支えることとなろう。
良かれ悪しかれ、米国と日本では地理的状況の違いからウイルスの感染拡大に対する受け止め方にも相当な温度差がありそうだ。そうでなければ、米国の主要な株式指数が次々に史上最高値を更新するような展開にもなりにくいはずである。もっとも、目下はリスク回避マネーが米債利回りを一段と押し下げていることにより、その結果として株高が演出できているところもあると見られる。
とまれ、先週のなかでドル/円が一時再び110円台に乗せる動きとなったことは見逃せない。結果、あらためてドル/円は一目均衡表の週足「雲」上抜けにトライする格好となってきているうえ、クリアに上抜ければ「いよいよトライアングル上放れ」となる可能性も秘めている。ただ、それは必ずしも主体的なドル高の動きではないのかも知れない。
なにしろ、足下ではユーロの弱さがあまりにも目立つ。前回更新分の本欄で「ここはより戦略的にユーロ/ドルに対して戻り売りを仕掛けるタイミングを計りたい」、「1.1100ドル処というのは、一つの上値抵抗として意識される可能性もある」などと述べたが、案の定、先週のユーロ/ドルは週を通じて下げ続け、節目の1.1000ドル処はおろか、昨年11月29日安値=1.0981ドル処をも下抜ける動きとなった。
ウイルス感染の影響で中国経済の停滞がしばらく続くと見込まれることは、やはりユーロの弱気材料として大きい。そうでなくとも、足下でユーロ圏の景気は回復の見通しが立ちにくい状況を続けており、先週7日に発表された12月の独鉱工業生産指数も前月比3.5%低下、同月の独製造業受注指数も前月比2.1%低下と、実に散々な内容であった。
週明けのユーロ/ドルには、5日続落の反動が生じる可能性もあり、一旦利益確定のために買い戻しておくことも一手であろう。とはいえ、なおも基本的には戻り売りスタンスで臨みたいと個人的には考えており、仮に1.0950ドル処をクリアに下抜けた場合は、そのまま1.0900ドル割れを試しに行く可能性も大いにあると見ておきたい。
(02月10日 08:30)