先週は「これが本物のジェットコースター相場というものか」と、これまでの認識を新たにさせられるような1週間であった。振り返れば、週初(9日)はドル/円が一時101.17円まで下落する場面を目の当たりにすることとなり、その瞬間は少々背筋が凍る思いもした。ところが、翌10日のNY時間帯には大きく切り返し、大量のストップを次々に巻き込む形で一時106円手前まで上昇。その後、再び103.09円まで下押す場面もあったが、週を終えてみれば週初の水準から大きく値を戻し、一時は108.50円まで上値を伸ばすという極めてボラタイルな値動きであった。
ちなみに、先週9日安値の101.17円という水準は、ちょうど前回の米大統領選の開票結果が明らかとなった2016年11月9日の安値にピタリ一致する。その点が大いに意識されて、とりあえずは一旦下げ止まったと見ることもできるだろう。今後も一つの節目として意識される可能性があると認識しておきたい。
ちなみに、前回更新分の本欄で筆者は、あえて「少し市場が冷静さを取り戻す(「パニック」が落ち着く)までは様子見に徹するのが無難」と述べた。実際、ヘタに参戦していたら相当な傷を負っていた可能性が高いと思われる。
振り返ると、先週10日にNYダウ平均が前日終値比で1000ドル超上昇したのは、トランプ米大統領が「給与税免除の可能性」に触れたことが主要因であり、市場は過度に大きな「期待」を抱いた。それが、翌11日、12日には大きな「失望」に転じ、市場は一種のパニック状態に陥ってしまったわけである。今にして思えば、連日の米株価急落は政策催促相場の様相を呈していたと受け止めることもできる。
そして、結果的に米政権は13日に慌てて「国家非常事態」を宣言するに至った。同時に、トランプ米大統領は野党・民主党が策定した数十ドル規模の経済対策法案を承認した。ここで民主党にも花を持たせることで、自身が熱望する大型減税に道を拓きたいとの思いからであろう。むろん、減税は選挙対策の意味合いも強い。
同日のNYダウ平均は前日終値比+1985ドルの大幅高を演じた。それは、一つにペロシ下院議長が「トランプ政権とウイルス感染の緊急事態への支援策で合意に近づいている」と述べたことによる。結果、ドル/円も108円台まで大きく値を戻すこととなったわけだが、果たして8000億ドル規模にもなるという巨額減税が本当にすんなりと実現するものだろうか。期待は抱き続けたいものの、今しばし警戒は怠れないものと心得ておきたい。
もちろん、基本的にドル安一辺倒の流れではなくなってきているということも見逃せない。前回更新分の本欄で「冷静に考えれば、ウイルス感染拡大の影響はユーロ圏においても甚大であり、いずれその点が材料視される局面も再来する」と述べたが、案の定、先週のユーロ/ドルは10日以降に大幅な下落に見舞われた。
前回は、ユーロ/ドルが一時的に一目均衡表の週足「雲」を上抜ける展開となったことについて「少々パニック的」とも述べたが、実際のところ先週の週足ロウソクは長い上ヒゲを伴う長い陰線となった。要するに、先週9日までの大幅な戻りは、単に「パニック状態のなかでのオーバーシュート」であったということになろう。
既知のとおり、このほど米連邦準備制度理事会(FRB)は、緊急の利下げ(1ポイント)を実施するとともに、債券保有を7000億ドル(約74兆7000億円)増やす方針を表明した。そのため、今週予定されていた米連邦公開市場委員会(FOMC)は行われない。
それにも拘らず、時間外のNYダウ先物は大幅に下落する展開となっており、週明けのオセアニア市場ではドルが大きく売り戻される格好となっている。FRBとしては、先手を打って、なおかつ持てる手段をほぼ出し尽くしたつもりだろうに、それがかえって市場を疑心暗鬼にさせた可能性もないではない。今しばらくパニック状態は続きそうであり、なおも基本的には様子見を続けたい。
(03月16日 08:45)