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第710回  ドルが相対的に優位な状態は今しばらく続く…?

2020年05月18日

 先週は、週初から中国や韓国でコロナウイルスの感染者数が再拡大しているとの話題が飛び交っていた。また、米ホワイトハウス内で感染の事実が確認されたなどと伝わったこともあり、感染第2波や感染拡大の長期化に対する不安が市場で顔をのぞかせていた。
 むろん、米欧の一部で経済活動の再開が段階的に始まったことから、一段の景気悪化に歯止めがかかるとの期待も大きくなっており、そうした期待が基本的に米・日株価の下値を限られたものにしていると見られる。ただ、その一方で米中間の対立が再び強まり、株価の上値を押さえる要因として無視できなくなっていることも見逃せない。
 振り返ると、先週のNYダウ平均は、週初(11日)から水曜日(13日)までの3日間で合計1000ドル超の値下がりを見ることとなり、市場のリスク選好ムードはやや後退した。先週13日に伝わったパウエルFRB議長の電話会議でのスピーチの内容が想定以上に悲観的なものであったことを株安の一因とする向きもあるようだが、正味のところ特段に材料視するほどのものではなかったと考える。むしろ、足下でNY原油先物価格が大きく値を戻してきていることはポジティブに受け止めたい。

 いずれにしても、目下の市場では強弱材料が其々に交錯して金融相場全体に方向感が見出しにくくなっている。結果、ドル/円は106円台後半から107円台後半の狭いレンジ内での上げ下げに終始しており、今週も似たような状態が引き継がれるものと見られる。
 日足チャート上でドル/円の値動きを確認しても、200日移動平均線と89日移動平均線はやや下向きながらほとんど横這いで推移しており、これといった動意は見られない。ことに注目されるのは、先週のドル/円の値動きが一目均衡表の日足「雲」のなかでのものに限定されていたことであり、足下の膠着感は一段と強まっている。
 なお、前回更新分の本欄で注目した豪ドル/円は、結局のところ節目の70円処で上値をガッチリと押さえられてしまい、むしろ週末にかけては69円割れの水準に値を沈めることとなった。それは、一つに「中国政府が豪州の企業4社から肉製品の輸入を停止する措置を講じる」と伝わったところが大きい。既知のとおり、豪州は新型コロナウイルスの感染拡大を巡って独立機関による中国での調査を求めており、それに反発する中国が意趣返しに乗り出したと見る向きが少なくない。
 言うまでもなく、中国は豪州にとって最大の輸出相手国であり、ことに肉製品の輸出禁止はダメージが大きい。そんな弱い立場にある豪州をねじ伏せれば、足下で世界全体に拡がりつつある「コロナ被害の対中損害賠償要求」という中国にとっては忌々しいムーブメントを弱体化させることも可能になると踏んでいるフシもありそうだ。

 そのようなわけで、豪ドル/円の上値期待は少々遠退いてしまったという感もないではない。ただ、相対的なドルの強さは損なわれていないと見ることもでき、その背景にはトランプ米大統領が「強いドル」を容認する姿勢をあらためて明らかにしていることがある。トランプ氏は先週14日にもFOXニュースとのインタビューにおいて「現時点で強いドルを持つことは良いこと。誰もがドルを持ちたがっている」などと述べていた。
 また、足下ではユーロやポンドに下値リスクが台頭してきており、結果としてドルが優勢になっている。市場では、ユーロ圏の主要国が国債を増発する必要に迫られると見る向きが増えており、結果的にECBが資産購入枠を一段と拡大する可能性も高まっているとされる。一方で、目下の英国は欧州連合(EU)との貿易交渉に行き詰まっており、ここにきてEU側の姿勢が一層強硬なものとなってきていることがポンドの重しにもなっている。
 ユーロ/ドルは足下で1.0800ドルの節目を試し続けており、ひとたび同水準をクリアに下抜ければ1.0600ドル台が意識されやすくなると見られる。また、ポンド/ドルは三尊天井のネックラインを下抜ける動きとなっており、結果的にドルは相対的な強みを発揮しやすくなっていると見ておきたい。             (05月18日 08:50)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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