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第806回 「米インフレはピークアウト」との見方が拡がる…

2022年05月30日

 先週末27日までNYダウ平均は6営業日続伸となった。何より、米国内のインフレが鈍化の兆しを見せ始めていることが大きい。ことに、25日に公開された5月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録において、米連邦準備制度理事会(FRB)が市場の想定を超えた利上げを実施する意向を示さなかったことが市場の安心感につながったといえる。
 そもそも、インフレの一段の加速やFRBによる金融引き締め方針に対する市場の見立ては、先々週あたりまで極端な悲観やタカ派に傾き過ぎていた。それが、今回のFOMC議事録の内容や幾つかの米経済指標の結果を受けて、かなり修正され始めている。
 実際、目下の市場からは「FRBが中立金利の水準まで政策金利を迅速に引き上げたあとは、利上げを一旦停止する可能性もある」との声まで聞かれる。

 少し振り返ると、先週24日に発表された4月の米新築住宅販売件数は、事前予想の75万件を大幅に下回る59.1万件に留まった。米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の26日発表によれば、米国の住宅ローン金利は足元で大幅に低下し始めているという。依然として高水準ではあるものの、とりあえず上昇一服となったことは一つの朗報である。
 また、先週27日に発表された4月の米個人消費支出(PCE)物価指数は食品とエネルギーを除くコア指数は前回から減速し、同日発表された5月のミシガン大学消費者信頼感指数も前回実績と市場予想を下回った。
 他にも、4月の米耐久財受注や米中古住宅販売成約指数など、先週明らかになった指標結果の多くが、インフレはピークアウトしたとの見方を支持するものだった。
 既知のとおり、バイデン米大統領は対中制裁関税の引き下げを前向きに検討し始めているという。また、この6月にはサウジアラビアのムハンマド皇太子と初会談の機会を設ける可能性もあると伝わる。一方で、米国内における石油・ガスの掘削装置(リグ)稼働数は着実な増加傾向を辿っている。一時期、コロナ禍によって250基程度にまで減少した稼働数が最近では720機程度にまで増加している。こうしたことを通じて、原油価格の先高観やインフレ高進への警戒感も徐々に和らいでいくものと思われる。

 前回更新分の本欄で、ドル/円について「127.60円処を軸とした127.00-128.20円のレンジ内での動きを続ける」と予想したが、実際には先週後半に向けてレンジが0.5円分切り下がることとなった。大きかったのは、やはり4月の米新築住宅販売件数の結果であったが、ほどなく127.60円処まで値を戻す動きとなったことも見逃せない。ちなみに、24日の安値=126.35円処は「3月末のポジション調整時に一時的にもつけた安値から、5月9日につけた直近高値までの上昇に対する50%押し」の節目にあたる。
 また、26日の欧州時間入り後に再び126円台半ばの水準まで急落する場面もあったわけだが、これはそのときに飛び込んできた黒田日銀総裁の発言に「出口」を意味する単語が入っていたことにアルゴが反応した結果であり、ほどなく切り返して結局は下に「往って来い」の展開となった。

 そうしたことも勘案したうえで、今週のドル/円は127円を軸とした126.50-127.50円のレンジ内での値動きになると見ておきたい。今週は、31日に発表される5月の米ISM製造業景況指数はやや弱めの予想となっており、瞬間的なドルの下値リスクには警戒しておく必要があると思われる。
 一方、先週のユーロ/ドルは筆者の想定以上に上値を伸ばす格好となったが、やはりその上値余地には自ずと限りがあると見る。先週は、23日に欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁から「7月に利上げが可能になる」との見解が示されたことで、ユーロ/ドルのレンジが一気に切り上がったが、当面の上値は1.0800ドルあたりまでに限られると見る。
 (05月30日 07:00)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。


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