【南アフリカの財政状況の続編】
先週も書きましたが、2月26日に南アフリカのムボウェニ財務相は2020年度の財政演説を行い2020年~2021年度の財政予算案を発表しました。今回の予算案は2019~20年度の予算案のGDP比-6.3%(中期財政計画では-5.9%)より-6.8%(中期財政計画では-6.5%)と財政収支は悪化しました。
景気低迷を受けて経済成長率の想定を下方修正したことで、歳入見通しが大幅に下がったことが原因でした。2020~21年度の成長率見通しは1.7%(2019年財政演説2019年2月)、1.2%(2019年中期財政計画2019年10月)、0.9%(2020年財政演説2020年2月)と引き下げられました。成長率の見通しの引き下げに伴い、財政収支の対GDP比は-4.3%、-6.5%、-6.8%と悪化してきました。
ラマポーザ政権はこれに対して税制の改正は盛り込まず、歳入の拡大が期待できない中で歳出を大幅に削減しましたがそれでも歳入の落ち込みをカバーできない状況です。
政権は改革派として期待され、歳出の膨張は抑制しましたが、インフラ投資、教育など長期的な国の発展に寄与するための予算を確保するための財政改革はほぼできていない状況です。
国営電力Eskomの改革も労働組合の反対で進まず、与党アフリカ民族会議は重要な支持基盤の労働組合との対決をしてまで改革に踏み込めない状況が続いています。
今回の財政演説による金融市場の期待値は高いものではありませんでした。そのために演説後のランドの下落は限定的でしたが、ランドは対ドルで、すでに年初の14ランドから15.3ランドに下落しておりランドの売りがすでにかなり出ていた模様です。
今回の演説を受けて南アフリカ国債の信用状況がさらに低下したことは間違いありません。今後の南アフリカの格下げという現実が一歩近づいたものと思われます。
【新興国通貨売りは止まったか?】
新興国通貨 四本値 フィボナッチリトレースメント ピボットポイント
先週まで多くの新興国通貨は下落していました。IIF(国際金融協会)が発表した統計によると、2月半ば以降に新興国から250億ドルの資金が流出しました。株式からは185億ドル、債券からは65億ドルの流出がありました。
ドルランドは1月初旬の14ランドから15.8ランド付近に、ドルトルコリラは1月下旬の5.85リラから6.25リラ付近に、メキシコペソは2月中旬の18.6ペソから19.9ペソと新興国通貨は下落しています。南アフリカのところで書いたように、それぞれ下落の原因はありましたが、それまで堅調だったメキシコペソが2月20日から下落したように、最近のコロナウィルスの感染拡大によるリスク回避の流れが新興国通貨の下落を加速させています。
3月3日のFRBの緊急利下げによってドルの上昇が一服して、新興国市場の下落も一旦止まっています。長期のチャートを見るとドルランドは2016年5月の高値15.98付近、ドルトルコリラは2019年5月の高値6.2460、ドルメキシコペソは2019年9月の高値19.8620付近が直近のレジスタンスレベルとして意識されます。
目先は下落が続いていた新興国通貨がFRBの利下げによってドル売り新興国通貨買いとなるかポイントになります。3月17~18日に行われるFOMCでさらに0.25%の利下げ期待もあり、そのことは短期的には新興国通貨にとって下落の抑制材料になります。
もちろん各国それぞれに事情やコロナウィルス感染拡大によるリスク回避の流れが新興国通貨の下落材料にはなりますが、FOMCの緩和姿勢が続くようであれば下落一服となる可能性もあります。
南アフリカランド円は先週書いたように重要サポートの7円を下抜けして昨年8月26日の安値6.769円を目指す動きとなり一時下抜けして6.734円まで下落しましたが、その後反発して6.844円付近で推移しています。今回の安値6.734円がサポートできるか、できれば6.734~7.2円のレンジが想定されます。
トルコリラ円は3月2日に17.087円まで下落しましたが、そこがサポートされ17.816円まで反発しました。ここには一目均衡表の基準線、転換線が位置しており短期的なレジスタンスになっています。17.816からサポートされていた18円のゾーンが上抜けできないと17~18円のレンジが想定されます。
メキシコペソ円は2日に5.587円まで下落後5.607円付近まで反発しましたが、ここには一目均衡表の転換線が位置しレジスタンスになっています。昨年8月25日の安値5.187円が射程に入り、ここが維持できれば5.187~5.6円のレンジが想定されます。