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外国為替古今東西

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第80回 「ユーロからアジアへのメッセージ」

株式会社マネーパートナーズホームページ寄稿 2012年5月

 ユーロ圏の危機はアジアにも多くの影響を及ぼしているが、その最たるものは、多国間で通貨を統合するということが如何に難しいかを教えたことだろう。50年の努力の末にやっと統一通貨ユーロが生まれ、ユーロ圏をあげて喜びに沸いたのも束の間、たちまち瓦解の危機が声高に叫ばれるようになってしまった。かつては、「ユーロに見習え」と活発だった「アジア共通通貨論」もこのところ鳴りをひそめている。

 しかし、統一通貨ユーロが現在さまざまな困難に直面していることは、決して予想外の事態ではない。ユーロには大きなチャンスと同時に大きなリスクがあることは、欧州自身が良く知っていることだった。問題はチャンスの到来に浮かれて、リスクへの対応を怠ったというだけの話だ。

 しかし、アジアがユーロ圏危機から学ぶべきことは統一通貨の可否だけではない、もっと根本的なことである。アジアは金融や通貨の世界での自らの位置付けをどうするのか。たしかに、生産・消費・貿易・投資の世界でアジアは世界の中心になった。世界経済の成長はアジアが支えているともてはやされている。しかし、そういう実体経済の反面にある域内間の金融取引はいまでも圧倒的にドルとユーロで行われているし、それを担っている多国籍金融機関も圧倒的に欧米のものである。アジア諸国の政府はその外貨準備資産の殆んどを域外通貨で保有している。

 つまり、世界経済におけるアジアの地位の向上というのは、まだ非常に歪なのである。ユーロ圏危機でユーロの将来に不安が生じ、「問題はあるけれど、やはりドルか」という声が上がるのは、このアジアの歪さの表現なのである。

 では、アジアはどうしたら良いのか。SDRを世界通貨にするのは夢にすぎないだろう。アジアに単一の通貨を作るのもユーロ以上に難しい。人民元か日本円をアジアの基軸通貨にするのも、まだ現実味のある話ではない。とすれば、アジアの主要国、日中韓が機能的な協力関係を強化することで、円・元・ウォンの域内利用を拡大して行くことが近道であろう。幸いなことに、リーマン危機以後三国の政府・中銀・民間で金融協力への関心は急速に高まっている。国債の持ち合い、スワップ網の拡大は進んでいるし、外準の共同プールや共同投資基金も話題に上っている。金融協力も政治と無縁であり続けられないのは当然である。だから、政治の動きを待つのではなく、むしろ金融協力がイニシアティブをとり、市場の声で政治を動かすという発想が必要だろう。日本がアジアで、そして世界で、一目おかれる大国であり続けるためにはこういう積極性が必要だろう。

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プロフィール

  • 著者近影行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

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