最新の記事
スペインの2012年予算案はユーロ圏の財政規律の試金石に
昨日のマーケットは、上海株の大幅続落を起点に世界連鎖株安となり、主要国際商品や豪ドルなどリスク資産通貨が下落幅を拡大するなか、日本円が全面的に買い戻される展開となった。
中国経済のハードランディング懸念に加え、ECBが政策判断で重視する3月のユーロ圏総合景況感指数が市場予想に反して低下したことや、OECD(経済協力開発機構)が発表した経済見通しで景気回復の脆弱さが浮き彫りとなり、リスク回避を主体とする手仕舞い相場の様相を呈した。
この日実施されたイタリアの長期国債入札は概ね順調にこなされたものの、30日にユーロ圏財務相会合やスペインの2012年政府予算案の発表を控え、28日のムーディーズによるポルトガル金融機関5社の格下げや、S&Pのソブリン格付け責任者が「ギリシャは再び債務再編を余儀なくされ、救済に関わった欧州各国政府なども巻き込まれる可能性がある」と述べたことが蒸し返されるなど、ユーロ圏債務危機に対する懸念が払拭されていないことを示した。
これにより、ユーロ圏重債務国の国債に売り圧力が再び強まり、特にスペイン国債は同国各地で労働改革に反対するゼネストが行われるなか、利回り上昇が顕著となっている。
スペイン政府は今月3日、EUと合意した2012年の財政赤字目標をGDP比4.4%から5.8%に緩めたため、EUの反発や市場圧力を受けて12日のユーロ圏財務相会合で追加的な財政赤字削減策により5.3%に引き下げることで合意した経緯がある。 しかし、ラホイ首相率いる与党国民党が、25日に行われたアンダルシア州議会選で単独過半数を獲得できず、緊縮措置に対する信認を得られなかったため、財政赤字削減策が骨抜きになるとの見方が燻っている。
実際、スペイン政府が本日提出する予定の2012年予算案は、付加価値税の引き上げや公務員の給与削減を盛り込まない見通しとなっており、市場関係者の間ではユーロ圏の債務問題打開が困難であることを示す可能性があるとの指摘がなされている。
スペイン政府は今月2日、同国が2012年に1.7%のマイナス成長に陥るとの見通しを示している。 また、同国現地のエコノミストによれば、長期景気停滞やデフレを特徴とする日本化が最も進んでいるのは、南欧のうちスペインであり、住宅バブル崩壊の影響は日本のように長引くと指摘している。 スペイン中銀は今月16日、同国の2011年の債務がGDP比で68.5%となり、2010年の61.2%から拡大したことを明らかにしたが、リセッションが予想以上に深まった場合、緩和された財政赤字目標さえも困難になる。
低成長や高い失業率に苦しむユーロ圏各国が、一段の赤字削減を迫る財政規律を緩和させるのかどうかを見極める上で、スペインはその試金石となっている。
こうしたなかで開催されるユーロ圏財務相会合では、「ファイアウォール(防火壁)」の拡充が最大の焦点となっており、声明草案によればユーロ圏救済基金の合計融資能力を2013年半ばまで7,000億ユーロとするとともに、資金拠出を一段と加速させることで合意する見通しとなっている。
これまで合計融資能力の上限を5,000億ユーロとする方針が示されてきたが、「欧州安定化メカニズム(ESM)」と「欧州金融安定ファシリティー(EFSF)」の並行運用を認めることにより、EFSFの残額2,000億ユーロを上乗せし、合計7,000億ユーロとするようだ。 もっとも、ドイツは恒久的な基金であるESMの上限の5,000億ユーロを堅持すべきとの立場は崩しておらず、2013年半ばにかけてあらゆる未使用資金は解除されるため、新規融資を行う上でESMが唯一の資金になる点は従来通り変更はないようだ。
4月20-22日に開催されるワシントンG20財務相・中央銀行総裁会議では、IMFの融資財源拡大が主要議題の一つとなっているが、1月のG20会議では欧州が一段の措置を講じるべきとの見解で一致しているうえ、ラガルドIMF専務理事はユーロ加盟国が救済基金の規模を拡大させれば、IMF加盟国が融資財源強化に合意する動機となる可能性があると述べている。
足下では、ユーロが対ドルで急速に買い戻されているが、一段の上値追いには本日のユーロ圏財務相会合でG20各国や市場を納得させる規模の「ファイアウォール」を構築する必要があり、“Buy the rumor, Sell the fact”(噂で買って事実で売り戻す)となるリスクも念頭に置いておきたい。
ドル/円については、本日序盤にE-計算値の81.86処(=83.02-【84.18⇒83.02】)を達成する81.83円まで急落する場面がみられたが、再び82円台へ回帰している。 もっとも、『21日平均線』が昨日のNYクローズで破られている点に鑑みれば、短期的な地合いは押し目買いから戻り売りに転換しているとみられ、Fibonacci pointの81.44処や81.07処に向けた下落余地には留意したい。
(3月30日 11:40記)





| 2012年03月30日 | スペインの2012年予算案はユーロ圏の財政規律の試金石に |
| 2012年03月29日 | 消費税政局、難航した第1ラウンドを経て第2ラウンドへ |
| 2012年03月27日 | バーナンキ議長、早期の緩和解除観測の軌道修正を図る |
| 2012年03月23日 | ECBインデックス、財政・金融政策と整合的な方向性は・・・ |
| 2012年03月22日 | 市場テーマの焦点が定まらず目先は神経質な値動きに |
プロフィール
- 森 好治郎(もりこうじろう)
日本テクニカルアナリスト協会
認定テクニカルアナリスト(CMTA1)会員番号200762
米国CTA(商品投資顧問)出身の異色ストラテジストフューチャーズアナリスト時代に培った独自分析手法を武器に外国為替ストラテジストに転身、現在に至る。"国内外の新聞・テレビ・ラジオ"出演多数。
1993年
全米証券取引業協会(NASD)商品投資顧問(CTA)
資格NFA ID:0260098
1994年
日本ファイナンシャルプランナーAFP資格
ライセンスNo.30078027
1998年
金融先物取引業協会内部管理責任者資格
2001年
証券内部管理責任者資格



















