●米景気循環をベースにした金利とドルの関係
2009年はあと1週間を残すだけとなった。
年初は、各国首脳から「世界経済は崖から落ちた」といった厳しい見方が示されるなか、経済の重要先行指標となる製造業景気指数や企業景況感指数が軒並み急激に落ち込み、警戒感が広がった。 市場ではリスク忌避的な投資行動により、世界的な株安と原油など国際商品が下落、為替マーケットでは米ドルと日本円が広範に買われる展開となった。
しかし、各国政府および中央銀行による大規模かつ大胆な財政支出と金融緩和策によって、企業の生産活動はV字型の回復を見せ、主要株価も3月1週をボトムにして上昇に転じる。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が「景気は最悪の状態だ」と公言した数日後の3月3日、オバマ大統領は「株価は長期投資家にとって魅力的な水準に近付きつつある」と述べている。 この時のNYダウの終値は6,726.20㌦であり、それが12月24日は10,520.10㌦まで上昇し、年初来高値を更新している。
要人発言は、時として"潮目の変化"を示唆するシグナルとなっているが、株式の専門家でもないオバマ大統領の発言通りの相場展開となっているのは、米国経済のポリシー・ミックスが積極財政・金融緩和・通貨安の政策総動員による"リフレ政策"が採られていたためである。
リフレーションの過程では短期金利の低下に伴ってマネーは短期金融市場からよりリスクの高い(内外の)株式などにシフトする。
これが「ドルキャリー・トレード」の背景となるが、リフレ政策には長期金利の上昇という副作用があり、FEDは11月3日のFOMC(連邦公開市場委員会)で初めて低金利を維持することで生じるマイナスの副作用について議論していたことが議事録(11月24日)で明らかになっている。 バーナンキFRB議長は11月16日の講演で、「雇用の最大化と物価安定という2つの責務に対するリスクを防ぐためFRBはドルの価値の変化が及ぼす影響を注視している」と述べ、異例の「ドル安監視」発言を行っている。
ここでも要人発言が潮目の変化を示唆する重要なシグナルとなっていたわけであり、主要6通貨に対するICE(インターコンチネンタル取引所)のドル指数先物市場では、通貨・株式・商品などの先物・オプションを中心に運用するヘッジファンドのドル売りポジションが「ドル安監視」発言を境にして一気に買い戻され、足元では4週連続の買い越しとなっている。
そして、11月の米雇用統計の発表以降は景気回復基調を示唆する指標が相次ぎ、米金利先高観とともにドルが買われる展開となっている。
昨日は米雇用市場の基調をより正確に示すとされる新規失業保険申請者件数の4週間移動平均が465,250件と昨年9月20日以来の低水準へ改善したことで、米長期金利の指標となる10年債利回りが3.8048%と、今年8月7日以来の高水準へ上昇している。
しかし、この日の米株式市場は長期金利の上昇という重しを跳ね返して、主要3株価指数が揃って年初来高値を更新している。
つまり、米株式市場が過剰流動性相場から業績相場へ移行しつつある証左とすることができ、これが事実とするならば足元の長短金利の上昇は良い金利上昇となってくる。
とはいえ、米家計部門が膨大な債務の返済というバランスシート調整の真只中にあるうえ、米商業用不動産価格は下落に歯止めが掛かっておらず、拙速な長期金利の上昇は回復基調を腰折れさせる要因となりかねない。
来週は、米財務省が総額1,180億㌦規模の米国債入札(2年・5年・7年債)を実施するが、金利先高観が高まっている状況下ではこれまでのような順調な応札が見込みづらくなっている。
米景気循環をベースにした金利とドルの関係では、「第Ⅳ象限」に位置するものとみられる。
この局面では、米マクロ経済指標の好転とともに景気回復期待が醸成され、長期金利が上昇に転じ始める。 米金利先高観からドル高になるとの見方が浮上し始めるが、歴史的には危機的なドル暴落を経験してきた局面でもある。
債券投資の観点からは、債券の利回りは循環的なボトムにあるため投資家は買い控える。
なおかつ、これから先の金利上昇過程で債券価格の下落が想定されるため、既存の債券投資者は一斉に売り逃げようとする。
つまり、債券投資が最も忌避される局面であり、米金融当局は急激な資本流出やドル暴落を促すリスクを回避するため、「強いドル」への言及と同時に「低金利政策を維持する」と言い続けることになろう。 今年のドル相場は、水星が逆行した3回のうち全てでドル安方向へ振れており、12月26日から始まる水星逆行は要注意となりそうだ。
(12月25日 11:15記)
お知らせ:
2009年のデイリー・コメントは本日が最終号となります。 本年もありがとうございました。
次回の発行は1月6日(水)を予定しています。
当レポートでは、値動きの背後にあるストーリーを考えるという観点から市場のテーマや注目点を採り上げて参りました。 来年も多角的な観点からマーケットを観察して参りますのでよろしくお願い致します。
フォレックス・ウォッチ 森 好治郎
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