●米成長戦略はウォールストリート(金融)からメインストリート(企業)へ
「米国が世界第2位になることは受け入れられない」――― オバマ米政権の内政・外交の施政方針を示す一般教書演説(01/28)は、まるで選挙戦のような演説となった。
オバマ大統領による就任2年目の演説の特徴は、「雇用創出」に照準を合わせたことであり、その中心的役割を中小企業に託し、成長の原動力として「輸出を5年で倍増させる」との考えを示した。
つまり、米国経済は企業重視で成長を目指すということであり、換言すれば「金融立国」からの脱却ということになる。
先週の新金融規制案は「オバマショック」などと報じられているが、08年秋の未曾有の金融危機は金融バブルを主導した米投資銀行による無謀なリスクテイクが背景にあり、オバマ大統領は昨日の施政方針演説で金融危機を再発させないとの決意を改めて表明している。 何より、昨年の米財政赤字は金融機関救済も含め危機後の景気対策などで過去最悪の1兆4千億㌦に拡大しており、二度と金融危機は許されないという事情がある。
したがって、金融機関は、本来の金融仲介機能という役割を果たすべく、黒子に徹しろということであり、極論すれば米国は「金融立国」から「輸出立国」へ大きく舵を切ったということになる。
オバマ大統領は昨年11月14日に訪日した際に行った講演で、「今回の景気後退が私たちに教えた重要な教訓の一つは、主に米国の消費者とアジアの輸出業者に依存しながら成長を促進することの限界です」と述べている。 そのうえで、「米国の新戦略は、貯蓄を増やし、支出を減らし、金融システムを改革し、長期的債務と借入れを削減することを意味します」、「私たちが構築し生産し、世界中で販売できるように"輸出"に重点を置くことを意味します。これは私たちの雇用戦略です」と述べている。
金融危機前の過剰消費頼みではなく、アジアなど新興市場国の外需を取り込む考えから、「輸出」に重点を置くことを明確にしている。 また、現在一部の市場関係者が非難している新金融規制案がこの「金融システム改革」に含まれているのである。
今朝の日経新聞の社説は昨日のオバマ演説について、「為替政策には触れなかったが、過去、多くの大統領が強いドル政策を掲げたのに対し、オバマ政権はドル安を容認している」と述べている。
そのうえで「輸出を倍増させるなら、基軸通貨ドルの減価を容認するという危険な政策を続けるとみるべきだ」、「各国に一層の市場開放を働きかけることにもなろう」と断じている。
確かに、米国の輸出促進にはドル安と市場開放が必要との考えは理解しやすいが、バーナンキFRB議長は昨年11月16日の講演で「雇用の最大化と物価安定という2つの責務に対するリスクを防ぐためFRBはドルの価値の変化が及ぼす影響を注視している」と異例の「ドル安監視」発言を行い、広範なドル安に歯止めをかけているのである。 これは、超低金利政策の継続のためには全面的なドル安は放置できないということであり、2010年のドル相場は二極化(⇒貿易黒字国に対してはドル安)するとみる必要があろう。
一方、昨年9月のG20首脳合意により「均衡ある成長」に向けた政策の枠組みなどをまとめることになっており、経常黒字国は内需主導による成長戦略を強化する必要がある。
注目の中国は2009年に貿易黒字が34%縮小したにもかかわらず、同年のGDP成長率は8.7%を達成している。 (IMFが今月26日に発表した世界経済見通しによれば、2010年の中国の成長率は10.0%、2011年は9.7%が見込まれている)
中国政府は今後5年以内に貿易黒字を対GDP比で半減させると述べており、この過程では人民元の切り上げもしくは変動幅の拡大が想定されるため、日本円は人民元をはじめとするアジア通貨高のなかで上昇圧力を受け続けることになろう。
(1月29日 11:40記)
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