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市場養生訓

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第419回

2012年1月24日

※マネーパートナーズからのお知らせ:筆者都合により、本コラムの次回更新は2012年2月14日(火)となります。

 銀行の自己資本比率を規定する「バーゼル3」(新たなBIS規制)を巡って、厳格な適用を主張する英国と、緩和を求めるドイツ、フランスの間でもめている。米国では、いわゆる「ボルカールール」により銀行の自己勘定による取引が見直され、業務の再編が進行中だ。そうした影響もあり直近の四半期別の決算はよくない。それに人材が銀行からヘッジファンドなどの規制外の金融機関(影の金融機関)に流れている。大手の銀行でも良い人材の確保に苦労しているとの話も聞く。

 為替市場では銀行が取引量でも中心的な役割を果たしてきたが、金融危機の前でもヘッジファンドなどの金融機関の取引量の伸びは著しく、取引量は銀行と肩を並べるほどに増えていた。こうした傾向に今回のボルカールールや自己資本規制などの銀行規制が拍車をかけることは確実だ。

 そこで懸念されるのが市場の流動性だ。為替市場は多くの市場の中でも最も流動性の高い市場だ。その流動性を第一義的に担ってきたのは銀行だ。銀行は自己勘定でも活発に取引するが、顧客の値決めやそれを円滑に行うための流動性の供給を果たしてきた。つまり有力な銀行の場合、取引をしたくないときでも市場にレートを供給してきた。それは自己勘定での取引を含めた為替取引全体の活発化によって高まるものだ。

 今回の金融、経済危機はその影響の深刻さから、危機の引き金を引いた銀行全体の見直し論が出てくるのは当然だ。自己資本や業務の再編、それに報酬体系などだ。どれも危機の発生や増幅の要因とされるものだ。

 私は中でも報酬体系が一番問題だと思っている。そもそも金融機関のボーナス(成功報酬部分)が欧米の金融機関で一般化し始めたのは70年代終わりから80年代初めにかけてだ。それは実際に大きな収益を上げるディーラーを報いるためだった。その割には固定給が少なかったからだ。

 それが次第に固定給が高い経営陣まで、マネージメントの功績ということでボーナスを得るようになった。彼らの多くは実際に稼ぐわけではないが、稼げるディーラーを雇うことで、ディーラーよりもはるかに高額のボーナスを手にし始めた。そこでは商品のメカニズムがわからなくても、詐欺的と思っても、利益が上がるという点で、その商品を承認する強い動機が生まれる。事実そのようにしてきた。それはサブプライムローンばかりではなかった。

 米国のCEOの報酬は一般の人の平均の325倍だそうだ。これで革命が起きないのが不思議だ。銀行の自己勘定の取引を禁止するよりも、この不平等性を正すことのほうが本質だろう。

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プロフィール

  • 小口幸伸小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。
    元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。
    横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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