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第183回 「トマト・スープと野菜サラダ」

2020年12月03日

株式会社マネーパートナーズ ホームページ寄稿     二〇二〇年 十二月

 米国大統領選後のごたごたもやっと収拾に向かって、年末迄には「正常化」が実現しそうである。しかし今度の大統領選については、トランプとバイデンという候補者間の対立、共和党と民主党という二大政党の拮抗のみならず、白人と黒人、金持ちと貧乏人、年寄りと若者、国際協調優先と国益重視、社会保障と自己責任等々さまざまな領域で米国内の「分裂」が尖鋭化したという不安感が非常に強く喧伝されている。この「分裂」はバイデン政権になっても解消せず、その結果米国社会や政治の不安定が続き、それは米国の国際的役割に影響し、世界の姿を変えるかも知れないというのである。

 二大政党制の民主主義国で国内の世論が二つに分かれるのは当然であり、それが何時も危険な「分裂」だということにはならない。むしろ健全な民主主義の強みである。現に「分裂」していると心配されている多くの問題は、一つ一つを採り上げれば、いずれも大事な話で、真剣な議論と対応が必要なものばかりである。
 それでは一体われわれは米国の「分裂」の何を怖れているのだろうか?
 結論を先に言えば、米国人自身が米国という国の在り方、米国人という人間の在り方が判らなくなってしまっているということなのである。「米国は移民の国だ」と言うが、それは誤りである。確かに、米国人の半分は独立以後に世界中からやってきた移民の子孫である。しかし米国という国を作ったのは移民ではない。十七世紀に英国での圧政に反抗して、自らの宗教的政治的信念を実現する社会を作ろうという明確な意思を持って新大陸へやってきた入植者達なのである。そして彼等が抱いていた「米国の在るべき姿」は「自由と個人の尊厳の尊重」だったのである。
 独立後、米国にやってきた移民達はこういう米国に憧れて米国人になろうと願った。ニューヨークに到着して自由の女神像を見た移民達の喜びと精神的高揚は想像に難くない。彼等は一生懸命英語を学び、星条旗に忠誠を誓い、米国の信念を自らの信念とした。移民は米国に同化したのである。
 このプロセスがスムースに働いている限り、米国が世界の指導国家になるのはむしろ容易なことだったろう。二十世紀に米国が唯一の覇権国家として君臨したのはこのような移民国家の強さがフルに発揮された結果だった。
 しかし、世界も米国も変わった。とくに一九六〇年代に公民権法が成立した頃から、世界にはグローバリゼーションの波が押し寄せた。米国内では金融と情報産業の肥大化が社会の歪みを増殖し、黒人をはじめとする様々な「少数グループ」の権利がもっと尊重されるべきだという声が急速に高まっていった。
 自由と個人の尊厳という明快で強固な信念を共有する同質的な植民者の集団と、それに同化しようと努力する移民の集団で構成されていた米国の社会は変質してしまった。
 「米国はトマト・スープだったが、野菜サラダになってしまった」という米国人がいる。トマト・スープはパセリを入れてもクルトンを入れてもトマト・スープであることに変わりはない。誰も間違わない。野菜サラダはいろんな野菜が混在していて何がメインの素材なのか判らないということらしい。昔の米国人は他のいかなる国民にもまして「米国人とは何か」という共通した意識・アイデンティティーを持っていた。二十一世紀の米国人はその共通した意識を失い、それぞれのグループがそれぞれの利益を主張して他を非難し合っている。その状態が「分裂」と呼ばれているのだが、重大なのはそれが「喪失」であることなのだ。今米国人は自らの持つ最強の価値である「米国のアイデンティティー」を喪失するかの瀬戸際に立っているように見える。米国が中国との競争に勝ち、世界のビーコンであり続けるためには建国以来の歴史の中で培ってきたアイデンティティーを回復しなければならない。それができなければ、米国は芯の無い「悪い民主主義」の模範になってしまうだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。


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