株式会社マネーパートナーズホームページ寄稿 2014年12月
12月14日の衆院選挙は消費税引上げの一年半延期の当否を問う選挙だという。何とも説得力のない話ではある。今日本の政治が国民に問わねばならぬ最も喫緊の課題は2年前に一応の国民的合意ができた筈の「社会保障と税との一体改革」に明確な数値目標を付して、それへの支持を求めることではないのか。
世界経済では米国と中国の二人勝ちの様相が明白になっている。米国経済はゆっくりとしかし着実に回復している。金融緩和で触発された株価上昇が企業投資と個人消費を支えている。公平で競争的で創造的な企業社会は依然健在である。生産年齢人口は増加しておりシェール革命等で生産性も向上している。中期的には3%前後のGDP成長率を確保できるだろうと予想されている。
中国では習近平政権による経済・社会両面での改革が進行している。経済面では投資抑制による成長率7%前後への軟着陸はほぼ順調に進んでいると云って良いだろう。一方、金融改革と人民元国際化は予想以上のスピードで進んでいる。10年以内に人民元がアジアの主要通貨に、そして上海が主要国際金融センターに成長する公算が大きい。
政治・社会面の改革はまだ明確でない。汚職追放の第一ラウンドは終わったようだが、今後どう進展するか判らない。そして、政治・社会改革の根幹である共産党独裁体制そのものにどういう変化が起るのかは、習体制の次か次の次の世代にならねば判らぬだろう。それ迄中国経済は現在の路線に沿った近代化を続けて行くと思われる。
米・中と比較すると日本と欧州の状況は残念ながら見劣りがする。云う迄もなく、成長率を支えるのは生産年齢人口、労働生産性、設備投資の3つの要素である。日本は人口は減るばかり、投資もふえないとなると、潜在成長率はゼロに近いと云われる。ということは、このままだと10年後に米国経済は日本の八倍、中国経済は日本の5倍ということになる。図体だけ大きくても仕方ないと云うのは格好は良いが、社会保障も払えなくなることを忘れてはなるまい。
日本経済は危機的な将来に直面しているのである。アベノミクスはまだ本当の第一歩なのである。その第一歩すらもたついているのは、国民が真剣に将来を見る機会が与えられていないからではないか。老人たちはどうせ自分達は死ぬんだから将来は関係ないと思い、若者達は将来は自分達のものだという実感を持っていない。これを変えられるのは政治家とメディアだろう。長期政権というのは、その間に大事な改革が行われるのなら、貴重な機会である。民主主義というのは、国民が政治家を信用するか、政治家がその信用に値するかを試す試行錯誤の繰返しなのだから。