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第112回 「2015年は円安ストップ」

2015年01月05日

株式会社マネーパートナーズホームページ寄稿 2015年1月


 2015年の国際金融情勢はどうも昨年同様落ち着きのないものになりそうだ。そもそも主要国経済は歴史的な低金利、低インフレ状態だし、超緩和政策下で創り出された流動性がその中で1ベーシスポイントでも高いイールドを求めてうごめいている。各国経済のファンダメンタルな状況はそれ程複雑怪奇というものではなく、それぞれの可能性と問題点は良く判っている。むしろ問題なのは政策当局の姿勢や能力がはっきりしないことと、単純な経済問題でない地政学的なリスクがあちこちに発生していることであろう。原油価格、ギリシャ問題、ウクライナ紛争、ロシア経済制裁等々である。


 つまり、今年のマーケットは数字で示される経済実体だけでなく、むしろそれ以上に、金融当局の政策対応の方向性やタイミングに神経質になるだろう。そしてそれは当局の側でもマーケットがどう反応するだろうかという予測を考慮に入れなければならないということである。考えて見れば、皮肉なことだが、これは、リーマンショック以後金融政策の説明責任とか透明性とかいうことに世の関心が高まった結果でもある。情報過剰がもたらした消化不良の一例だろう。


 多数意見のシナリオとしては、年央頃に米国の政策金利引上げ開始、日欧とのズレで円・ユーロ安、リスク・オフ効果で途上国からの資金流出と通貨安ということであろう。しかし、仮にその通りだとしても、そのような事態そのものが安定的に処理されるかどうかは判らない。日本の場合でもデフレ脱却の正念場にあるので、状況は仲々にデリケートである。インフレ2%の目標達成が当初の期待より遅れることは避けられないが、問題はその結果円安がさらに進んだり、長引いたりする可能性である。2013年以来の急激・大幅な対ドル円安は巨額のドル建資産評価益を生んだ。しかしその後二年を経て明らかになったのは、円安だけでは輸出の増加や投資の国内回帰は起らないということであった。さらに重要なのは、円安というのは円の購買力の減少である以上、円安で消費や投資が増える筈がないという単純な事実である。


 今年の日本経済にとっての一つの課題は円安の非生産的な側面をこれ以上悪化させないことである。当初の円安による一過性の収益増でショック療法的に期待の改善が行なわれたメリットは評価されねばならない。しかし、その役割はすでに終った。1ドル100円を超える円安が長引くということは、実勢相場が中長期のすう勢からますます乖離するということであり、それは将来の修正をよりきびしいものにすることになるだろう。


 実体経済を活性化して成長を促進する方策はすでに明らかである。新規参入と投資促進のための規制撤廃、社会保障の持続可能性確立、財政の長期的改善の3つである。それぞれの分野で少しずつ前進が行なわれていることは認めるに吝かでない。しかし問題はスピードである。米国経済が改善して行くというのであれば、大事なことは日本経済も同じ方向で改善しているのを示すことである。そうすれば為替相場も歪まない。今年はそういう意味で大事な年である。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

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