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第114回 「自分誉めの罠」

2015年03月02日

株式会社マネーパートナーズホームページ寄稿 2015年03月


 最近いささか気になるのは日本のメディアに見られる「自分誉め」の繁盛ぶりである。テレビも印刷物も日本の良さと強みを自賛するニュースに満ちている。曰く、日本の技術は世界最高である。曰く、日本の食物は世界一、サービスも世界一である。曰く、日本社会は世界一秩序があり、清潔である。曰く、外国人は皆日本贔屓である、中国人や韓国人も公式には反日を装っているが、内心では日本が好きである、等々。


 自分の国の強みや長所を正しく知ることはきわめて重要である。外交の成否は自分が相手に対してどういうバーゲニング・チップ(交渉上の切り札)を持っているかで決まる。人も国も自分の強みを知れば、それを土台にして困難な課題にも挑戦しようという決意が生まれるのである。


 しかし、私が案ずるのは、最近の「自分誉め」がこういう前向きの効果だけでなく、現実を直視する不愉快さから逃避するという結果を生んでいるのではないかという点である。


 云う迄もなく現在世界は経済的にも地政学的にも歴史的なうねりの真只中にあり、それは日本が位置する東アジアでもっとも顕著である。端的に云えばアジア・ナンバーワンとしての中国の台頭である。中国経済の規模はあっと云う間に日本の倍になった。減速してもその差はますます拡がるだろう。かつての、日韓が作り、中国が組立てて、欧米に売るという東アジア・サプライチェーンのモデルは根本的に変わり、作るのも買うのも中国というパターンになりつつある。中国企業の存在感も米国に比するようになった。とくにアリババを筆頭とするIT企業が躍進している。人民元の国際的利用も上海の国際金融センター化も着々と進展している。中国主導のアジア・インフラ銀行、シルクロード基金の設立準備も進んでいる。韓国との関係でも、折角の日韓通貨協定は失効してしまったが、中韓自由貿易協定は今年にも発効する。


 訪日外国人客が増えるのは大変結構だが、肝心の日本の国内消費は一向増えないで、頼みは外人客の免税購入というのは余りにもいじましい。


 率直に云って現在世界、とくにアジアにおける日本の発信力、存在感が徐々に低下しているのは否定できない現実である。日本は金融政策頼みでない、国家としての統合的な経済政策をフル稼働させて、日本経済の復元力を実証しなければならない。


 日本だけでなく欧米でも同じだが、深刻な需要不足への対応として、金融緩和が唯一の実行可能な政策であることは確かである。そして、金融緩和の効力が実体経済に十分伝達されるかどうかは、経済主体の将来に対する期待が如何に改善されるかにかかっている。日本について云えば、誰でも日本経済が社会保障と税制の一体改革を始め、さまざまな中長期の課題を抱えていることを知っている。そして誰でもこういう課題が一朝一夕には解決しないことも知っている。大事なことは、日本経済が全体として正しい方向に向かって前進しているのか、政府と国会が正しい問題意識と決意を持っているのかを市場がどう判断するかである。その評価が肯定的であれば、金融緩和は確実に期待の変化を生むのであり、逆に否定的なら金融緩和は実体経済に伝達されないだろう。


 経済外の分野で大事なのは、とくにアジア諸国から信頼と支持をえられるような、国としての理念をはっきりさせることである。そのためには歴史を総括することが避けられない。戦後70年も経ったのに、中韓をはじめとするアジアの人達が、総括は十分行われたと思っていないのも残念ながら事実である。そしてその責任の過半が日本にあることも否定できない。この総括未完の状態こそが日本が中韓やアジアに対して胸をはって主張できない背景にある。


 大事な仕事は沢山あるのである。「自分誉め」で遊んでいる暇はない筈だ。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

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