株式会社マネーパートナーズホームページ寄稿 2016年3月
世界中が景気後退の再来に脅えている。ロシアとかブラジルなどの特定の国を除けばそれ程危機的な情況にあるとも思えないが、メディアや国際機関は声高に警鐘を鳴らして、国際的な協調行動がとられないと世界全体が不況の淵に沈まんばかりの形相である。
何とない不安感が広がっていることは事実である。その原因は今日の世界経済にはたしかに見通しの定かでない出来事が数多く存在しているということだろう。曰く、昨年12月に始まった米国FEDの金利正常化のプロセスは今後どうなるのだろう?曰く、米国金利が上昇すれば途上国から資本が流出してしまうのではないか?曰く、原油価格はどこ迄下落するのか?曰く、中国経済は急減速して世界中が需要不足になるのではないか?曰く、人民元が大幅に切下げられて、世界的な通貨戦争が始まるのではないか?曰く、欧州の金融機関は破綻するのではないか?等々である。
これだけ問題があると、一つが改善しても他が悪化するという繰返しで、何時迄経っても空は晴れない。世界中のムードが暗くなるのである。
一つ忘れてならないのは、今日不安材料と云われる出来事はその殆んどが明暗両面を持っていることである。米国の金利引上げは米国経済の健全な回復の反映である。原油価格の下落は消費国、消費者にとって大きなプラスである。中国経済の減速は懸案の構造改革進展の反映である。だから現在の事態の好悪を査定する時は何時も複眼的視野を持つことが必要である。
それにしても、日本人の経済観と云うのは国際的に見ると一風変っているなと思う。アベノミクスは悪戦苦闘している。日銀は釈迦力に頑張っているが成果は芳しくなく目先はマイナス成長に陥ってしまった。当然メディアや識者からは批判の声が上る。そしてそこに共通しているのは、「成果が上らないのは、第三の矢である成長戦略(構造改革)が進んでいないからだ」と云う主張である。そして、その声にもかかわらず、政治的対応が十分でないのは内外の認めるところであろう。国民が本当に成長の加速を求めるのなら、国民は政治に勇気と実行を迫らねばならぬ筈だが、国民は政治にきわめて寛容であり、不平不満は云うが内閣支持率は下らない。
実質賃金が低下し続けていて消費がふえる筈はないではないかと誰もが云う。それなら最高益を謳歌している企業経営に賃上げを要求したら良いではないかと思うが、今日の日本ではストライキはおろかデモすら見かけない。おどろくことに、労働組合が賃上げを「自粛」している。
こういう有様を見ると、日本人は日本経済の成長を本当に望んではいないのだと思えてくる。それでは成長する筈がない。幸せな国民である。