FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

FX・CFD・証券取引・外国為替のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

外国為替古今東西

最新の記事

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

第131回 「危険な進路」

2016年08月01日

株式会社マネーパートナーズホームページ寄稿 2016年8月


 日本の経済政策の方向が何やら不安になってきた。「景気対策」やら「金融緩和」の叫び声が異常に囂しく聞えるのである。そもそも世界中が低成長期で日本経済だけがとくに悪いというわけでもないのにこの騒ぎは何なのであろうか。一方では過去4年間の経済政策は大成功だったと自讃しながら、他方では財政金融政策総出で支えないと大変だというのはどういう判断に立っているのか。


 どうも現状の混乱は詰まるところ政治家の不安心理の反映ではないかと思われる。いわゆるアベノミクスには当然達成された部分と達成されていない部分がある。2013年の円安と株高はアベノミクスの成功を可能にするための必要条件の一つであって、それ自体が成功の完結ではなかった。残念なことに、当局と企業はその認識が十分でなく、結果として成功のプロセスを完結することができなかった。円安と株高はアブク銭のように消えてしまった。


 実体経済が期待したように改善しないことに不安と焦りを憶えた政治家は、政治的判断におされて、消費税引上げを再延期してしまった。この決定が犯したあやまちは、経済政策が上手く行かなかったから再延期するとは云えないために、国際経済情勢が非常に危険であり、日本にも害が及ぶからという責任転嫁をしてしまったことである。引上げ再延期の決定で日本経済の防護が強くなったわけではない。逆に、この決定で、理由は何であれ日本経済は心配なんだということを政治家自らが国民に伝えてしまったのである。


 7月の参院選は経済政策論争が皆無であった。そもそも選挙の本義である選択を提示できる野党が誰一人いない光景はまことに心寒いものだった。結果は日本国民を蝕む惰性のバロメーターに過ぎなかった。


 というわけで日本の経済の現状についての政治家の判断は妙に不安定なものになってしまっているようだ。円安と株高が覚醒剤的な効果を持つことは良く判った。しかし行き過ぎるとマイナス効果が出ることも明らかになったし、そもそも政策効果として恒常的に円安と株高を維持することは論理的にも難しいことは否定できない。デフレ傾向にあって購買力が漸増する通貨が逆の立場にある通貨に対して安くなり続ける筈がない。利益率が安定して改善されなければ株価の長期的上昇も期待はできない。


 かと云って実体経済の改善、消費や投資の増加、滞在成長率の上昇を明確な目標として設置し、それに至る中長期の、既得権打破の痛みを伴なう政策を全面的に打ち出す勇気はとてもではないが政治的に持ちえない。雇用制度自由化、法人の農地所有、公的医療保険の縮小、移民への門戸開放等の課題は、何時迄経っても評論家のテーマでしかありえないのである。


 将来の話は避けようということになれば、当面の話題に注力するしかない。そして皆が喜ぶのはズバリ云ってバラマキであろう。空前の人手不足だと云われながら、借金で賄われる公共事業をふやし、働く者の給料をふやすのではなく、一人何万円という札束の配給である。


 最近私が心配なのは、こういうバラマキ論が横行すると共に、そういうバラマキ論を擁護する説、つまりばらまいてもその為に国の借金がふえて将来困ることはないし、今迄の金融緩和のように日銀が渡した金(カネ)が皆銀行に滞って消費や投資に使われないということも起らない、という夢のような説が尤もらしく流布しはじめていることである。いわゆるヘリコプターマネー説である。簡単に云うと、政府は日本銀行から返済の必要のない資金を調達する。例えば無利子永久国債を買わせる。政府はその資金を直接消費者に配るという話である。こういうことを続けて国の信頼が傷付かないか、消費者は本当に安心して消費を続けるか、日本銀行の政治からの独立は保たれるかというような質問に対する答えは常識的にノーであろう。国民全体を生活保護者にするような制度が経済的・社会的・政治的に維持されないことは自明の理と思われるのだが、昨今のメディアはこういうお伽話に一見の価値があるような立場を示している。


 結論として云いたいのは、日本における経済政策についての昨今の論調が、政治家でも、メディアでも、経営者や消費者でも、きわめて危険な、その場限りの方向に流され始めているのではないかということである。杞憂であればいいが。

このページの先頭へ

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

コラム一覧

鈴木郁雄の実践トレーディング 外国為替古今東西 行天豊雄 外貨投資 転ばぬ先の智慧 田嶋智太郎
市場養生訓 小口幸伸
為替大観 小池正一郎
為替の話・トレンドを掴め! 木村佳子
武市のなぜなにFX 武市佳史

FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引および証券取引に関するご注意

パートナーズFX、パートナーズFXnanoおよびCFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格とには差額(スプレッド)があります。

取引手数料は無料です。ただしパートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの受渡取引に限り、1通貨単位あたり0.10円の手数料をいただきます。

パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの証拠金は、取引の額の4%の額と、金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額のうちいずれか大きい額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第27項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。

CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。 国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.7%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,700円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会

このページの先頭へ