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第148回 「視界ゼロ」

2018年01月05日

株式会社マネーパートナーズ   ホームページ寄稿 2018年 1月

 リーマン・ショック十周年ということで、回顧談やら教訓話が賑やかである。当時金融監督の責にあった高官達の話を聞いていると、その殆どはあの時何が起ったかというドキュメンタリーと自分が行なった対応が如何に正しかったかという話である。まあこういう場面での当事者の話というものは解説と自己弁護になりがちなのはやむを得ないが、もう一寸分析と反省があっても良いのかなという感じである。「危機はまたやって来るか?」という問いに対しては大半が「危機の記憶は鮮明だし、その後バーゼル3等の対応策がとられ、金融システムの抵抗力は格段に強化されているから、危機再来のリスクは小さい」という楽観論のようだ。

 しかし、リーマン・ショックというのは何だったのだろう。何故、世界の金融システムが崩壊するかのような大事件になったのだろう。  危機のきっかけが欧米市場での不動産バブルの破裂であったことは当時から皆判っていた。バブルの破裂というだけの話なら、昔から世界中で何度も起っていて特に大騒ぎをするような話ではない。2007年にサブプライム・ローン市場が破綻した時、世界中の中央銀行がなんらの危機感も示さなかったのは正にそれが当時の常識だったからである。

 不幸なことに、この常識は全く間違っていた。20世紀末から、金融なるものの世界は地殻変動を起こしており、変化した環境の下では、同じバブルの破裂でも今迄とは全く違う深刻さを持つようになっていたのである。この違いに気が付かなかった当時の金融当局者達は少なくともその不見識の責任は問われねばならないだろう。
  
 金融の地殻変動とは、市場のグローバリゼーションと金融派生商品の氾濫であった。かつては局地的問題として対処しえた不動産バブルの破裂は、瞬時に全世界に拡散し、錯綜した決済網を汚染した。リーマン・ショックのあと世界経済全体が信用の収縮と需要の崩壊によって破綻の危機に瀕したのは、金融の地殻変動によって拡大されたリスクの大きさをまざまざと示すものだったのである。

 金融の地殻変動はもう起らないのだろうか。20世紀末に起ったのはいわゆるフィナンシャル・エンジニアリングという情報通信技術の発達によって金融商品が多様化し、その市場が拡散したことであった。その結果、人間の行為である金融が行為者の想定を超えた規模の影響を世界経済に及ぼす結果となった。

 ここで重要なのは、情報通信技術の発展が21世紀に入って劇的に加速していることである。そしてその象徴的な分野の一つがビッグ・データという膨大な情報の蓄積とその処理であり、もう一つがそれを活用したAI(人工知能)の分野である。その技術進歩が金融の世界にどういう影響を与えるかは正直云って全く判らない。ただ、これから20年、30年に亘って現在のスピードで技術進歩が続けば、金融という行為も、複雑・膨大なハードとソフトの装備を兼有する主体(国であれ、法人であれ、個人であれ)の指示によって、ロボットやドローン同士の戦いのように行われるようになるという可能性はゼロではないだろう。そしてその時の金融世界の姿を決定するのは、主体が金融というものの存在意義をどう考えているかである。利益の極大化なのか、人間福祉向上なのか、それともその他の目標なのか。

 リーマン・ショックが起ったのはわれわれが金融世界の地殻変動を見逃していたからだった。いままた新しい、はるかに大きな変動が起ろうとしている。21世紀の国際金融は視界ゼロである。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

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