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第156回 「帰らぬ夢」

2018年09月03日

株式会社マネーパートナーズ   ホームページ寄稿 2018年 9月

第二次世界大戦末期の1944年7月、米英の呼びかけで連合国代表達が戦後の世界の通貨制度を検討するため、米国ニューハンプシャー州のブレトン・ウッズに集まった。米国代表はデクスター・ホワイト、英国代表はジョン・メイナード・ケインズだった。日本が無条件降伏する丁度1年前である。この会議で合意された制度はブレトン・ウッズ通貨制度と呼ばれ、基本的に戦後の世界経済を支える仕組みになった。

ブレトン・ウッズ通貨制度には二本の柱があった。第一に、米国は金1オンスが35ドルという平価で金とドルの兌換を保証した。第二に、他の国は自分の通貨とドルの為替相場を固定した。日本の場合は1ドルが360円であった。この安定した通貨制度の下で、戦後四半世紀の世界経済は歴史的にも珍しい繁栄を実現したのである。日本がこの制度の最大の受益者の一人であったことは間違いない。

実はブレトン・ウッズ通貨制度というものは本来根本的な矛盾を孕んだ制度だったのである。そもそも、ある一つの国の通貨を世界全体の共通した基軸通貨として使うということ自体が矛盾そのものであるし、基軸通貨国が経常収支の赤字を出すことによってのみ国際流動性が供給されるという仕組みが永続できる筈がないということは自明の理であった。現に、ケインズはこの案には強く反対したが、当時の米英の力関係で彼にとっては全く不本意な結論になったのである。

しかし、それならばどうしてそういう制度が持続し、世界を繁栄させることができたのであろうか?答えは単純明快である。それは米国が唯一の超大国として世界に君臨していたからである。米国はドルを基軸通貨として世界経済を支え、その軍事力で世界の警察官として平和を維持し、その自由なデモクラシーという理念で世界を指導した。米国の赤字が拡大して1970年代になるとついに金とドルの兌換を停止せざるをえなくなり、ドル相場の固定も維持できなくなった。つまり、ドルの価値は何等保障されなくなったのである。換言すれば、1944年のブレトン・ウッズ通貨制度は1970年代半ばには崩壊していたのである。しかし、世界は価値が保証されていないドルを使い続けた。そして相変わらず米国が世界の平和を維持し、デモクラシーのチャンピオンとして世界を指導し続けることを期待した。

考ええてみれば、それは当然のことだったとも云える。いろいろ問題が出てきたとは云え、米国が依然断トツの超大国であることは疑いもないし、米国に取って代わって世界の指導者になろうという能力と意思を持った国など何処にもなかった。米国の専横や独り善がりを批判する声は大きかったが、では自分が米国に代わって汗をかこうという声もなかった。米国はその優越した立場を驕り、謙虚さを失って行った。20世紀後半の世界はその意味では惰性と馴れ合いに流されていたとも云える。

しかし、21世紀に入って状況は根本的に変わりつつある。第一に米国人自身が世界の指導者という米国の役割に疑問を持ち始めている。多くの米国人が米国はその指導国としての役割のために過重な負担を負わされ、他国の只乗りを許しているという不満を持っている。為替相場でも貿易でも他国は自分に有利になるように操作をし、結果として米国の赤字を増やしている。米国はもう他国と同じように自分の利益を第一に考える国になるべきだという理屈である。トランプ大統領が出現した背景は正にこういうことだったのである。

第二の変化は中国が米国への挑戦者として登場したことである。中国は鄧小平の開放改革政策であっという間に世界第二の大国になった。21世紀に登場した習近平はそれ迄の「低姿勢を装って時間を稼ぐ」戦略を抛った。彼は中国が栄光の歴史を復活することを宣言し、中国が世界における大国としての正当な地位を求め、従って、米国による一国覇権を認めない立場を明らかにしたのである。第二次世界大戦後の世界を形作ってきたブレトン・ウッズ体制に対する始めての明確な挑戦であった。

現実問題として、米中の力の差はまだ非常に大きい。米国も中国の挑戦を強く意識し始めており、それを抑止するために全力をつくす姿勢を明らかにしている。米中共に強味と弱味があり、この超大国間の競争がどういう結末を見せるかは現時点で全く判らない。

しかし、一つはっきりしていることは、第二次大戦後数十年の間、世界が不安ながらも享受してきたブレトン・ウッズ体制という幻の秩序、つまり、一つの通貨、一つの指導国、一つの理念という安定した世の中はもう再現できないということである。夢は帰って来ないのだ。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。

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