株式会社マネーパートナーズ ホームページ寄稿     二〇二〇年 六月

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第177回「コロナ後の日本」

2020年06月01日

株式会社マネーパートナーズ ホームページ寄稿     二〇二〇年 六月

 コロナ・ウイルスは依然猖獗をきわめている。対策として取られている社会的距離とか都市封鎖とかいうのは云うなれば人類が自発的に市場を抹殺するという異常な行為であるから、家計消費の沈滞をきっかけに、あっと云う間に企業、社会、国家レベルでの経済活動に波及し、世界経済は第二次世界大戦後最悪の後退に直面している。その影響は経済に止まらず、文化、教育、政治等々社会構造の基本的なテクスチュアにも及んでいる。

 それだけでも大変なことなのだが、今我々が忘れてはならないのは、この出来事が世界秩序のあり方に歴史的な変化を齎すかも知れないことである。二十一世紀に入ってから世界が大きく変わっているのではないかという想いは皆が持っていたと思う。戦後の世界の安定を基本的に支えて来た米国中心の秩序が終わるのではないかという不安である。それは米国自身が指導力と指導者意識を失うと同時に、中国等の反米国が存在感を増したからである。世界は真の指導者がいないGゼロの時代に入ったと言う人もいた。

 コロナ・ウイルスのあと世界の関心は、これから中長期に見て、指導者として米中の力関係はどうなるのか、世界の秩序はどういう形になるのだろうかということだろう。コロナ・ウイルス前から習近平の国家資本主義体制下での中国の発展は瞠目すべきものだった。国を挙げてのデジタル化の急進、企業の国際競争力の強化、各分野での技術研究、開発力の向上、軍事力の近代化と拡充、中央アジア・東南アジア・東ヨーロッパ・アフリカ等への硬軟両様の外交姿勢等によって、鄧小平時代の量的拡大による存在感とは違った質的大国化を実現したことは間違いない。コロナ・ウイルスにおいても、毀誉は喧しいが、拡大阻止のための強力な管理能力、機材・資材の供給能力、医学的能力において欧米諸国に勝るとも劣らぬものがあることは万人の認めるところだろう。

 その一方で、一時はBRICSなどともてはやされた国々はコロナ・ウイルスのような全社会的危機に対して全く脆弱であることを露呈した。まともな国家として必要なハードとソフトのインフラがまだ整っていないのである。

 その結果、世界の関心はコロナ・ウイルスの経験で中国が米国と匹敵する、あるいは米国を凌駕する次の世界指導者として認知されるような実績を上げるだろうかという点に集まるのである。

 ワクチン・治療薬の開発と経済の再生という二つの戦線における米中の戦いは始まったばかりであり、勝敗の帰趨は全く判らない。両方共に長所短所があるし、こういう戦いで最後に勝敗を決めるのは、それぞれの社会が持っている自由な活力と自己矯正力だろうからである。いずれにせよ、これから何年かは世界の秩序がどうなるかが決まるとてもとてもとても重要な時代になる筈である。

 日本は一体どうなるんだろうか?実を言うとコロナ・ウイルスの前から日本は非常に深刻な課題を抱えていた。国家としての競争力の喪失である。一九九〇年代の初めにバブルが破裂した時、日本には宿題があった。一つは製造業とくに自動車に偏重した産業構造を改めてITや金融を発展させること。輸出依存度を下げて内需とくに家計消費主導の成長を図ること。公私を問わず国民生活全体をデジタル化すること。コーポレート・ガバナンスを世界標準に改善し企業の国際競争力を高めること、等であった。

 しかし、バブルが大きく不良債権問題は深刻であった。政治的指導力の不足もあって、その処理に多大な時間と労力が浪費された。宿題は何も解決されないまま二〇〇八年のリーマン・ショックに襲われ、国際的輸入需要の崩壊で日本経済の落ち込みはG7の中でも最大であった。日本は三十年を浪費したんだが、驚いたことにその浪費に対する反省と危機感が全くと云って良い程欠如していたのである。

 理由はいろいろあった。高齢化、生産年齢人口減少、失業率低下、過剰な社会保障、消費者物価下落、政治的対立軸不在による野党の消滅、自民党一強体制下の政治的安定等の現象は、他国において政治的、経済的、社会的不満が多かった背景と比較して日本人の間に異常な程の現状肯定、現状安住ムードを生み、政府やメディアもそれを煽るのに熱心だった。

 しかし、実態は安住を許すようなものではなかった。失われた三十年の間に、日本は成長力、生産性、技術力、高等教育の質、企業の競争力、デジタル化のスピードとレベル等々主要な指標の殆どすべてにおいて、G7中の最下位に転落してしまっている。とくに中国との比較は絶望的である。

 コロナ・ウイルス後の世界で新しい秩序の形成に向った動きが始まろうとする時に、日本が米中両大国のいずれかの付属国の地位に甘んじたくないと云うのであれば、誰もが一目を置く強さを持たなければならない。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。


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