複雑系、という言葉が以前、流行しましたが現在の世界経済を読み解くうえでまさにその「複雑系」そのもののという印象を受けます。
伊勢志摩サミットでオバマ大統領が来日する直前に沖縄での不幸な事件が顕在化し、経済以上にむつかしい問題を投げかけ、サミットが複雑化したように感じられます。
さらに参議院選挙に加えて、今だにくすぶる6月1日国会会期末に解散総選挙を表明するとの説を裏付けてきたのは、伊勢志摩サミット前に安倍首相がロシア・プーチン大統領との会談でした。
しかし、軍事政策に精通するクリントン元大統領政権顧問で、ヒラリー・クリントン氏とも近いとされるジョセフ・ナイ氏からは「ロシアへの接近には節度が必要」とくぎを刺されてしまったり、そもそもの同日選にも難しい問題が山積。
最近の安倍首相の表情がすっきりしないのは、消費増税、安保問題、選挙、TPPのことなど、難しく複雑で「どうしたものか」という思いが表れているからでしょう。
消費増税を延期するなら、いずれ財政問題から国債格付けに響いてくる可能性がありますし、伊勢志摩サミットやプーチン大統領との会見での外交成果の印象をひっさげて衆参同日選を決め、議席をさらに拡大して自らの政策を推進しようとの予定があったとすれば、様々な制約が生じてきているのは悩ましいことでしょう。
トレード側も、為替の行く末を考えるとき、こうした事態の複雑な様相にすっきり感がなく、気迷ってしまいがちですが、ここは「複雑系分析」から逃れて、FOMCと原油価格をメインに相場を考えるポイントに軸足を置きたいと思います。
アメリカ経済は大統領が変わる時期に差し掛かっている点で新たな大統領の政策全容が現時点では不明です。しかし、事務方(ルー財務長官など)からのメッセージは「TPP推進と消費増税は予定通り」です。
TPPをアメリカの文脈で貿易ルールを最適化することと位置ずければ強いドルで安い通貨国の資産を買うメリットを享受する時期と、安いドルで為替差益や米企業の競争力強化を企画したい時期、両方のタイミングがあると考えるべきでしょう。
今はFOMC6月か7月の利上げ説があり、これは強いドル支持に働きそうですが、会議開催が接近すればするほど、このサポートも効きにくくなります。それを補強する材料として原油価格(ドル建て商品)がしばし、サポートとして働くと考えられます。
すなわち、原油価格がしっかりであれば強いドルをサポート、弱ければドル安円高をサポートです。
今のところ、原油価格はしっかり展開し、上昇余力も保持していますので、ドルはしっかり目ですが、問題は長期チャートではドル安円高志向が強い点です。
やはり強いドル相場も6月10日のスーパーSQにむけた動きの一つという見方もしておく必要があるのではないでしょうか。
さて、今週のチャート分析は以下の通りです。
●ドル円
上値抵抗110.704
均衡109.144-109.585
下値支持108.808
●ユーロ円
上値抵抗122.389
均衡121.787
下値支持121.687
●豪ドル円
上値抵抗77.797
均衡76.768
下値支持74.633