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第203回 ~狩猟民族の眼~

2016年07月06日

 今、“ドルは強い-ただし円を除いては”、という相場だ。安全な通貨は世界で日本円しかないような強さである。以前はスイスフランも安全通貨として買われていたが、今はその面影が薄れている。


 2016年初からの変動率では、英ポンドが12.4%の下落で、米ドル指数も2.4%下落していることに対し、円は16%上昇、スイスフラン(対米ドル)も2.4%上昇している(ユーロは1.8%の上昇)。しかしBrexit以降(6/23から現在まで)でみると、その景色は違って見える。ポンドが11.3%の下落、ユーロも2.4%の下落に対し、円は3.8%の上昇、米ドル指数も3.1%上昇している。その中でスイスフランは1.7%の下落となっている。


 いかに円の強さが突出しているか、歴然としている。一つは、リスクを地域で見る姿勢が強まったことだ。ひとえに日本の地政学的な特殊性と言える。もともと背景として、実質金利(名目金利―消費者物価)では、円が米ドルより高いという見方がある。米国がマイナスに対し、日本はプラスになっている。


 これは物価上昇率の差によるものだが、消費者物価が米国がプラス1.0%(5月、総合年率)に対し、日本はマイナス0.4%(同)と大きな差があるからだ。高いところにお金は流れるということでいえば、ドル安円高になるのは自然な流れと言える。


 これに加えて欧州で金融不安が出てくれば、流動性があり、安全な場所として日本しか行く先がないことになる。日本の20年国債利回りもマイナスになったのは、買える資産がいかに少なくなったかの表れである。このような状況で、狩猟民族ディーラーは100円の先を覗いているに違いない。円高の要因をあげるのに苦労はないからだ。


 この見方が変わるためには、円高要因となっている材料のうち少なくとも過半数が、オセロゲームのようにひっくり返らなけばならない。その第一の関門が、今週末の米6月雇用統計である。市場の予想はNFP(非農業部門雇用者数)が18万人前後だが、市場を驚かせた5月(3.8万人)にどのくらいの改訂があるかも重要なポイントだ。中央銀行の政策決定会合も大きな材料だが、会合時期までにはまだ時間があるので、当面は米国経済指標や、欧州発の金融不安ニュースに神経を注ぐことになる。


  ただ、今の市場は、金融不安に関するニュースには、どんな小さな出来事でも材料にできる状態だ。英国首相の決定まで時間もかかる。この市場のセンチメントが変わるには、相当時間がかかるかもしれない。個人的には、夜明け前の一番暗い時間はまだ来ていないと考えている。しばらくは、円高バイアスの強い相場展開は続くだろう。


 今後1週間のドル円の相場レンジは、98.50-102.50円と予想。ユーロは、対ドルでは、1.0850-1.1150、そして対円では110-113円と予想している。

(2016/7/6、小池正一郎)


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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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