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第208回 ~ドル安を目論む見えざる手を探す~

2016年08月10日

 先週末には、予想以上に底固い米雇用状況を示す数字の発表を受けて、ドル円は101円から102円台まで買われ、週明けの8日には海外市場で6日ぶりに102.66円までドルは上昇した。しかし今週に入り米景気指標の悪化が発表され、利上げがまた遠のくとの見方から米金利は低下、再度ドル売り圧力が強まり、今日10日には101.11円まで下落した。

 まさに、ドル高のニュースの賞味期限は短く、しかしドル売りとなる材料には瞬時に反応するという市場の空気(というより、ビッグデータで判断するアルゴリズムたちのプログラムの方向性)を示す相場展開となっている。

 さて、この米景気指標は何? と、調べたところ、それは「労働生産性」であった。4半期ごとに労働省が発表する、従業員一人当たりに投入した労働量(賃金、時間)と、生産量の割合を示す指標だ。景気拡大期には上昇、下降期には下落することを確認する指標だが、今回は非農業部門がマイナス0.5%(予想+0.4%)、製造業がマイナス0.2%(いずれも前期比、年率)で、予想を大きく下回ったことがわかり、米景気のリセッション入りを懸念する内容となった。

 しかし、エコノミストのなかには、個別にみると決して悲観的な数字ばかりでなく、例えば単位当たりの労働コストは前期比+2.0%(年率)、前年同期比+2.1%と、賃金圧力が高まっていることから、FEDは利上げの一つの材料とする可能性があるとの意見もある。

 ただ、指数としては、四半期ベース(それも4~6月と大きく過去の数字)であり、重要視されない指標ではあるが、実際に為替市場でリスクに挑戦しているものにとって、「労働生産性、3期続けてマイナス成長」とのヘッドラインは、「米景気は成長していない、FEDの利上げ時期も遅れるだろう」との判断になり、瞬時にドル売りにでても不思議ではない。

 そこで市場の空気であるが、今は、「ドル売り材料の2倍以上の力を持つドル買い材料がなければ、ドルは上昇し続けることができない」とみている。方程式でいえば、ドル買い材料をB、ドル売り材料をSとすれば、2B―S≧0となる。たとえ売り材料がなくとも、よほど大きな買い材料が出ないとゼロ以上にならない(=ドルが継続的に上昇しない)ことになる。

 ではそれは何か? ひとつは、予定された経済指標において、予想を大きく超える(比較数字では倍以上の)結果がでることであり、そして予想されない時期に、サプライズとなる政策発動がされることである。短期的にはその可能性は極めて少ないが、相場秋の陣となれば、経験的に何かが起き、この方程式に近い相場展開になっていく可能性がある。

 今月後半のイエレン議長の講演(米国避暑地での中央銀行シンポジウム、通称ジャクソンホール会議)がまず注目されるが、それは序の口、9月の三大中央銀行の政策決定会合がドル上昇のスタートラインとなると予想している。

 ドル円相場でいえば、個人的には、ブレグジットで100円割れを見たことで今年年初から進んだドル安の底値を付け、2016年末にかけてドルは118円まで上昇すると考えている。ただ第3四半期はレンジ相場で推移、本格的なドル高は10月以降にくると予想している。

 今後2週間のドル円の相場レンジは100.50円-103.00円と予想。ユーロは、対ドルでは1.1050-1.1300、対円では112.00-116.00円と予想している。

**来週(8月17日)は、休稿とし、次回は8月24日となります**

(2016/8/10、小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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