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第232回 ~すべての問題を片づけるなの米戦略を忘れるな~

2017年02月15日

 トランプ・安倍会談では、大山鳴動、鼠一匹も出ず。そして晴天の霹靂のイエレン証言。それが過去一週間のドル円相場の動きであった。先週は111円台の円高、そして、今週はイエレンFRB議長が、議会証言で3月の利上げ可能性も残っていることを示すタカ派的な発言をしたことで、ドルは114円台に上昇と、週末をはさんでオセロでひっくり返ったようなドルの動き(売り→買い)になった。

 両イベントとも、渋滞理論でいえば、事前にスケジュールとしてわかっていた工事渋滞であり、市場は結果に備えて準備可能であった。そこで、円高材料か円安材料のどちらにもなり得る可能性のなかで、大方はリスク要因として準備し、円売りポジションを縮めていた。この市場の心理状態は、シカゴ筋の円売りポジションの減少からも読み取れる。しかしふたを開けてみれば、むしろポジティブサプライズ。結果として「噂で売って事実で買う」という相場展開となった。

 そして、今日(2/15)は1月30日以来の114.50円を超えるドル高となり、しっかりと114円台を固め始めてきた。これはチャート的にも確認できる。今週に入り日々線(ニューヨーク市場終値)がしっかりと短期(筆者は21日線使用)移動平均線を超えてきた。1月5日に終値が短期(21日)線を下回って以来、今年初めての方向転換である。合わせて、乖離幅は拡大を始め、短期線の傾きも昨日から右肩上がりに転じてきた。見るからにドルが上昇していく形である。

 では、今後この勢いは続いていくのであろうか。筆者の予想は、今月末のトランプ大統領の両院議会演説までドル堅調で推移し、3月以降は再度のドル安局面が来て、4月にドルが最安値を付けた後、その後反転し年末まで徐々にドル高で推移する、との見方である。

 この理由は、米国の政治戦略の読み方からくる。確かにトランプ・阿部会談は、少なくとも表面的には日本側にとって理想的な形で終わった。米国から通商・為替問題で、要求を受けるわけでなく、最後には、トランプ大統領の口から「米国は100%日本をサポートする」との言葉を得た。ゴルフを27ホールも一緒に回ったことで、二人の関係は一気に近づいたに違いない。それは大いに評価したい。問題が起こっても、一気に悪化することにはならないと考えている。

 しかし、アメリカの長い間の政治戦略を忘れてはならないだろう。それは「問題はすべてを片づけるな。常に問題は残して置け」というものである。確かにトランプ氏は民間出身であり、既存の政治家とは一線を画している。しかし「勝負は勝たなければならない」との哲学があるとすれば、時間差攻撃で、問題は必ず出てくると考えたほうがよい。

 例えば一国に対する交渉では、ポリティカル・エコノミーとしての分析では、「飴(相手国への妥協)」「鞭(圧力)」「強硬(表面的に攻撃)」「協調(第3国へ2国間の協調あるいは同盟を明示)」「棘(当面の先延ばし)」と使い分けて、個別戦略を立てていく。日本に対しては、まず「飴」を与え、「協調」を示したが、残りはこれから出てくるに違いない。麻生副総理とペンス副大統領との経済対話から、この本格的な闘いが始まる。そこでドル円がどう動くか、しっかりとシナリオを立てていく必要があるだろう。

 今後一週間の相場レンジは、ドル円は堅調の113.80-115.80円と予想。ユーロは欧州の政治動向懸念から対ドルでは1.0400-1.0600、ユーロ円を120.00-122.00円と予想している。
(2017/2/15、小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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