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第277回 ~終わっていないダボスの魔の声~

2018年01月31日

 ダボス会議には魔物がいるようだ。そこに集う人の口を軽くする魔物である。本来は違う意味であるが、今回ほど、この言葉の魔力を感じたことはなかった。

 ダボスとは、スイス東部の山岳保養地のある地名である。古くは、ドイツの小説家 トーマス・マン(1875-1955)の小説「魔の山(1924,英語訳 The Magic Mountain)」の舞台になった場所だ。これは、結核の療養のために滞在した主人公が、7年間で肉体的、精神的に成長していく物語である。この成長は、ダボスがある山の力だとして、作家・マンは、タイトルを「魔の山」とした。

 そんな場所で出たのが、為替相場に最も影響のある当局者からの発言。まるで、魔の山のささやきだ! ムニューシン財務長官のドル安容認発言は、筆者にとって全くの想定外だった。また黒田総裁の発言にも驚いた。今はニュースのヘッドライン(見出し)で、アルゴリズムがすぐに反応する時代。本音かどうかはともかくとして、言葉として伝われば、すぐ記事となり、瞬時に世界中に流れる、世界の目がダボスに集中していたので、為替市場の反応が早かった。

 黒田総裁の発言は日本では考えられないような直接的な言葉で、ある意味、世界中の為替関係者が最も欲しがる金融緩和を終えるタイミングに直結する不用意な発言とも思える。タイミングよく先週末日本で発表された12月消費者物価指数は、総合が1%と上昇、前月比では2ヵ月続いて0.4%のプラスとなった。しかし生鮮食品を除いたコアは前月と同じ0.9%、エネルギーも除いたコアコアも前月と同じ0.3%だったので、展望レポートで表示している物価目標で見れば、特に大きく変化したとは言えない。

 しかし、物価動向の評価に対し、それも日銀トップから出たことで一気に円買いが高まった。討論会の聴衆からの質問に対し、思わず本音が出たようで、「ダボス」だからこそ出たのではないだろうか。ドル売り材料を探していた参加者にとっては、まさに「待ってました!」となった。この影響はボディーブローのように続くのではないだろうか。

 さて、今週は、今後のドル相場の行方を決めることにもなる重要なイベントが続く。まず今日はトランプ大統領の一般教書が明らかになった。11月の中間選挙をにらんで、経済面の実績を強調し、公約であるアメリカン・ファーストを外交中心で推進することを表明した。ただ、事前に明らかになっていたが、具体的な詳細な政策は今後に持ち越していたことで、一部には失望感が出て、108円台半ばまでドルは軟化している。個人的には大きく売られることにはならないと予想しているが、次の予算教書を待ちたい。

 今日はイエレン議長最後のFOMCがある。声明で経済の評価が強まれば、ドルは下げ止まるかもしれない。また、イエレン議長の記者会見は、退任日にパウエル新議長と合わせて行われると予想している。そして今週末2/2は、米雇用統計がある。非農業部門雇用者数は、18万人の増加(前月は14.8万人)。やはり20万人は欲しいところだ。

 今後1週間の相場レンジとして、ドル円は108.00円~110円、ユーロは、対ドルで1.2300~1.2500、対円では先週と同じ134.50~136.50円と予想している。
(2018/1/31、小池正一郎)


※当コラムは毎週水曜日の更新です(水曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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