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第301回 ~内外の認識ギャップを追いかける~

2018年08月01日

 日銀の決定は、海外投資家の見立て通りの結果になった。まさに認識ギャップの違いが相場を動かしたと言ってよい。今回は金融緩和の出口となるような決定ではない、との判断で、海外筋中心に改めて円売りを仕掛けてきた。

 結果発表時は、111円割れから111円台前半まで上昇したが、日本市場ではそこが限度。しかしNY市場で本格取引が始まると、一気に112円直前までドルは買われ、今日8/1には東京市場では7月20日以来の112円台を回復した。月間ベースで見ても、7月の終値は111.83円であり、終値ベースで今年初めて短期移動平均線(21か月線)を上回り、これで、ゆっくりであるが、いよいよドル円の上向き方向が見えてきたと考えている。

 さて、今回の日銀決定会合は、久しぶりに日銀に脚光が浴びたイベントとなった。日本では、緩和政策の微調整が行なわるとの予想が、出口戦略の第一歩との政策転換にもなりうると、やや前のめり的な見方が広がっていた。それに対し、筆者が得た海外の見方は、日本は何もできないだろう、小手先の技術的な修正しかできないと、まずは日本サイドのお手並み拝見との声であった。ここが認識ギャップである。

 過去にも、この認識ギャップが相場を動かした例があった、その一つが、規制緩和の解釈の違いであった。英訳の間違えから来たことだったが、日本からは、緩和を”De-regulation”と訳して発信した。しかし、その単語は「規制撤廃」を意味する。海外では、その言葉から、大きな政策変更をに日本政府に期待したが、実際は、規制はそのまま残し、単に条件を緩和しただけであったので海外の失望が大きく、為替相場は大きく動いた。

 今回はこのケースに似た感覚であった。もし今回、黒田総裁が、2013年5月に行った米国のバーナンキ議長(当時)のように、米国は緩和政策を終え、出口政策の準備を示唆するとの発言を行っていたのであれば、事態は180度異なる。当時は、その結果、リスクオフが起こり、株価は下落、ドル相場もそれまで上昇(ドル円では2012年11月の80円台から、2013年5月の100円越えまで上昇)していたこともあり、この発言で天井を付け、また90円台前半まで下落した。

 米欧日の中央銀行で、今、出口を明確に示していないのは日銀のみ。為替市場の次の焦点はいつ日銀が出口政策を明らかにするか、である。今回をはじめとして、これからは毎回同じような現象が起こることになる。その分だけ、期待と結果のギャップが実際より大きく増幅されることに注意しなければならない。次の日銀会合は9月18-19日。それまで今回の弾力的な取り扱い(特に10年債利回り)について、日銀と市場がどのように折り合っていくか、注意深く追いかけていきたい。

 今後1週間の相場レンジとしては、ドル円は110.80円~112.80円、ユーロは、対ドルでは1.1580~1.1780、対円では129.50~131.50円と予想している。
(2018/8/1,小池正一郎)


※当コラムは毎週水曜日の更新です(水曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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