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第304回 ~米中貿易戦争へ米国は勝算あり~

2018年08月29日

 トランプ大統領の発言に、市場は徐々に免疫が高まっている。ドル売り材料となることが多い大統領の言動だが、先週末のようにNAFTA協定でメキシコと合意したようにドル買い要因となる事例も出てきた。「トランプ発言=ドル売り」として行動することはリスクであると、投資家の中でも意識が出てきたと思われる。

 確かに今でも発言直後は、大統領に敬意を表して反応するが、その影響期間はだんだんと短くなっていると見える。その背景として、ドルの需給を米国の好調なファンダメンタルズから考えると、トランプ発言だけでドル売りを仕掛けることは合理的でないと気付き始めた(あるいは、アルゴリズムでプログラムの修正がなされた)のではないだろうか。そして利食い、損切の幅の縮小が、取引レンジの縮小をもたらしている。

 そして、トランプ大統領がますます力を入れているのが、米中貿易戦争である。7月6日の340億ドルの追加関税発動を皮切りに、8月23日には、160億ドルの追加関税を発動させた。今後も9月以降の2,000億ドルの追加関税実施を目指して準備している。米中の実務者協議が進んでいるのもかかわらず米中関係の悪化の懸念が消えていない。ましては、1兆1,800億ドルと多額の保有米国債の売却という中国の報復が予想されているのにかかわらず、トランプ大統領のこの強気な姿勢はどこからきているのであろうか。

 その答えのなかに次の2点があるのではないかと考えている。その一つは、国際緊急経済権限法(IEEPA, International Emergency Economic Powers Act)である。1977年に施行され、安全保障にかかわる重要な法律として1977年に施行されたものだが、簡単に言えば、米国に安全保障や経済政策に重大な脅威を与える国に対し、資産の没収、凍結、外国為替取引などの禁止や規制を行うことができるものだ。トランプ大統領としては、最終的にはこの法律に基づいて、中国に制裁を加えることができると考えているのではないだろうか。この法律が適用されると、中国は米国債の売却ができなくなると考えられている。

 もう一つは、追加関税の正当性である。主要国の関税をWTOのデータで調べてみると、米国は最も低い。これまではTPPで分かるように、世界的に関税を引き下げていく方向であったが、他国が関税を下げないのであれば、米国は引き上げる権利があるとの考え方だ。工業製品の平均関税率(2017年)でみると、米国が3.4%であるのに対し、中国は9.8%、メキシコ6.9%、EU5.1%と米国より高い。これに対し、日本やカナダは4.0%と低水準であり、トランプ大統領としては交渉を後順位に置いていると推測される。

 これらのことから、トランプ大統領の施策は、必ずしも市場に混乱をもたらす話でなく、それが、大統領の支持率の上昇(2018年初の40%前後から8/24現在44)となって表れていると推測される。とすれば、今後ますます、米国ファンダメンタルズの比重が高まってきていると考えていいのではないだろうか。しばらくは、下がればドル買い、の戦略で攻めていきたい。

 今後1週間の相場レンジとしては、ドル円は110.00円~112.00円、ユーロは、対ドルでは1.1550~1.1750、対円では128.50~130.50円と予想している。
(2018/8/29,小池正一郎)


※当コラムは毎週水曜日の更新です(水曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。

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