9月に発表になった米国経済指標についての評価を見直す必要がある。これが今月の焦点である。その理由は、昨日発表になった、10年ぶりの低水準となったISM製造業景況感指数である。そして8月円高、9月円安に次いで10月は円高の月間になると予想している。
9月前半は、予想以下の雇用統計からリセッションへの懸念が広がったが、FRBが政策金利を引き下げたもののこれは予想通りであり、加えて声明やドットチャート等から、総じてタカ派的は決定であったことから、材料出尽くし感から、金利が下がってもドルは上昇に転じた。その上、中旬から下旬にかけて、年率4.1%と大幅増加の小売売上高や回復基調の住宅市況など景気の上向きを示す材料が出て、ドル高をサポート、ドルインデックスも99.667と2017年5月以来の高水準を付けた。
ドル円相場でみると、9月は、8月にトランプ大統領の対中貿易追加関税の発表が大幅なリスクオフ相場を生んだことに対する反動で、対中摩擦の緩和を材料に一気にリスクオンとなった。8月円高、9月円安は昨年まで2年続けて起こったパターンだったが、今年も同じパターンを踏襲することになった。
それが、ISMの発表で一転してドル安に転じた。なんと10年ぶりの低水準!大方は50以上の回復を予想していたにも関わらず、無残にも期待をくじかれ、ミニクラッシュのような相場になった。暴落ではないが、今後のドル下落を示唆する動きの始まりになると予想している。
その第一の理由は、これから発表する経済指標は、弱い数字が続くとの見方である。明日10/3にはISM非製造業指数がある。製造業景況感の急落は米中通商摩擦が製造業に大きなダメージを与えていることが明らかになったことだが、それが製造業にとどまらない可能性がある。その意味で非製造業景況感は注目に値する。先月は前月比プラスで56.4だったが、今月予想は55.0が米国市場のコンセンサス。好況/不況の分岐点である50よりは余裕を持った数字だが、前月より低下するとの見方だ。
そして、10/4には注目の雇用統計と、貿易収支が発表になる。両者とも前月とほぼ同じ(貿易収支は、前月540億ドルの赤字、非農業部門雇用者数は前月13万人、失業率3.7%)との予想が出ている。少しでも前月より低下すれば、そのインパクトは大きい。
ドル安の第二の理由は、トランプ大統領自身の弾劾問題の拡大がある。そしてドルインデックスが100に近いことで、ドル高牽制の発言予想である。今月には、米国の為替報告の発表が予想される。第三の理由が、政策金利のもう一段の引き下げ予想である。10月のFOMCは10/29-30に開催される。景気後退により、再緩和は世界的は基調であり、米国も例外ではない。
そこで、10月月間予想は、まずドル円は106円~108.50円である。すでに10/1に108.47円まで上昇したが、これが今月の高値になるかもしれない。今後は、徐々にドル安/円高で推移すると予想している。
さて、今後1週間の予想は、ドル円は、106.80~108.00円。またユーロは節目の1.09割れを実現したことで、下値が柔らかくなり、1.0850~1.0980、対円では116.50~118.50円と考えている。また英ポンド/ドルは合意なき離脱の確率が高まり、1.1950-1.2300と予想している。
(2019/10/2, 小池正一郎)
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