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第357回 ~続落している金の反騰を読む~

2019年10月16日

金相場が下落基調だ。金はリスクヘッジ資産の代表格であり、政変、金融市場の混乱などのリスク拡大時に買われ、その値動きはリスクの大きさに比例する。まさにリスクに対するリトマス試験紙と言ってよい。今日(10/16 午後3時)現在の価格は1,482ドル(=1オンス、以下同じ)。約1か月前の9/4には、1,557ドルと2013年4月以来、約6年5か月ぶりの高値を付けていたが、それから1か月余り金相場は下落トレンドの中で続落している。

この背景は、例えて言えば、大型ハリケーンを前にして避難していた投資家が、ハリケーンの勢力が衰え、また進む方向もそれていくと予想し、一旦市場に戻りポジション整理をした感じである。ドル円は、108.90円まで上昇、ポンドは1.2800ドル直前まで上昇、約5か月ぶりのポンド高、1週間で約5%暴騰となった。

避難先として買っていた金を売り、売りすぎた通貨を買い戻した形である。ただそのハリケーンは消えたわけでなく、勢力も再び高まる可能性もある。その時は、またリスクヘッジに戻らなければならない。決して安心してドルやポンドを買っているわけではない。

この背景は、具体的には米中貿易問題解決の一部合意と、英/EU間の合意によるUE離脱の期待である。これまでの懸念一色から比べれば、確かに一歩前進、やれやれだ、というところもある。しかし米中問題では部分合意であり、多くの関税問題は残っているし、ブレグジットにしてもまだまだ交渉は継続中である。ここ一両日が山場であり、バルニエEU主席交渉官の腕の見せ所だ。個人的には、合意、離脱時期の延期、決裂(10/31の合意なき離脱)の三つの中で考えれば、二番目の延期、と考え、ポンドは再び低下と予想している。

ところで、金は利息が付かないので、運用資産としての役割は低い。但し供給は限定的であることから希少価値としての需要はある。またインフレに備えてのリスクヘッジとしての価値もある。現在のデフレ時代には、この役割は低いが、将来的にインフレがなくなるわけではない。動き始めると値動きは速いので、必要な時に必要な量が入手できるとの保証もない。その意味で、金需要はコンスタントに存在するという価値を評価している。

また、米ドル圏から脱皮しようとする国、特にロシア、中国は、金保有額を着実に増やしていることも金価格の上昇は続くとの予想をサポートする。最新のデータによれば、ロシアは毎月コンスタントに買い続けており、2019/8現在は世界で6番目の2,230トンを保有している(ワールド・ゴールド・カウンセル調べ、以下同)。その原資は、米国債投資の売却である。米財務省のデータによれば、ロシアは米国債保有額を大幅に減らしている。昨年3月の961億ドルから、今年7月にはわずか85憶ドルと、1年4か月の間で、なんと12分の1まで減少させている。

一方中国も、毎月の買い増しではないが、年々保有額を増やし、現在は、世界7位の1,942トンの保有で、また米国債保有額も減額していることもロシアと傾向を同じくしている。1年で800億ドルの減少、19/6には最大保有国を日本に譲っている。ちなみに金の保有国は米国(8,133トン)、2位はドイツ(3,367トン)で、日本は9位(765トン)である。市場の不透明さが高まるにつれ、再び金の輝きは増すと考えており、金の役割を忘れるわけにはいかない。これまでの金の最高値は、2011/9の1,920ドルである。

さて、今後1週間の予想は、ドル円は、107.50~109.00円。またユーロは景気悪化を材料に軟調を続け、1.0900~1.1050、対円では118.50~120.50円と考えている。また英ポンド/ドルは離脱問題が混乱すると予想、1.2300-1.2800とポンド反落すると予想している。

(2019/10/16, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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