為替大観 第401回は、2020年9月17日に公開いたします。
ここ2~3日、株式市場が荒れている。米ナスダックは9/2に12,056.44の高値(終値)を付けたのち3営業日続落、連休明けの昨日9/8は終値が10,837.20と約一か月ぶりの安値となった。終値ベースで計10.1%のマイナス。ちなみにこの3日間の下落幅は、ダウ平均がマイナス5.6%、S&Pはマイナス7.1%であった。一方日本では、日経平均が9/2基準でいえば、9/8までは若干(27円)のプラス(今日までは214.61円のマイナス)であった。
米国株式相場の下げ幅を見ると、典型的なリスクオフ相場といえようが、為替市場はドル高円高となった。円高の要素として、前記の通り日本の株式相場はむしろ買われており、「円は安全資産」との考えに従っているからかもしれない(ただ今日は日本でも前日比は1.0%のマイナス)。
このようなドル円の相場展開について、米国の友人に聞いてみた。株式相場については専門家ではないので的確な答えにはなっていないかもしれないが、との前提で話してくれたことは、「今回のセルオフは、オプションがらみの極めて技術的なこと、それに今日はレーバーディ明けの秋相場の初日で積み残しを整理したまでのこと、この勢いが今後の方向性を作るとは考えていない。FRBが金融引き締めに転換するのなら、『それ、一大事!』となるが、それはあり得ない。今日(9/8)で下げ止まるのではないか。いわゆる、急スピードで上昇した調整で、健全な下げと見たい。これから安心してまた買っていけるのではないだろうか。この意味で来週のFOMCに大いに注目している」であった。
一方、為替市場については、より具体的で思いのたけを伝えてきた。基本はアルゴリズムに従うままということで、リスクオフ=円買の公式が今でも生きており、心理的にも納得できる。ドル高になったのは、資産選択の重要な要素である流動性と安全性について、米国は世界で一番、外すわけにはいかないからだ。しかし、ドルオンリーというわけにもいかないので、その代替通貨を探すことになる。それが「円」なのだ、という。やはり米国に次いで、世界第二の自由な資本主義国で、安全性、流動性は問題ないとの評価だ。
他に取引通貨としては「ユーロ」があるが、それは混合通貨であり、真のリスクオフ通貨にはなりえない。最近ECB理事から、ユーロ相場に注目しているとの発言があったが、これなどいい例だ。景気回復のためには、ユーロ高は中央銀行の緩和政策を打ち消すことになるので、ユーロ高が進むことは反対との意思表示と読んだ。明日のECB理事会で確認できる。またブレグジットに係る英EUとの交渉にも懸念があり、ポンドもこれ以上買い上がることはできない。
一方、日本については、安倍首相の後任について注目している。辞任の発表があったときは本当に驚いた。円売り、株高を演出したアベノミクスが消滅するのではないかとの発想から、まずはその反対(円買い、株売り)を仕掛けた。その後、政策は継承される可能性が高くなったということで、すぐにひっくり返したが。。。しかし、政治は不透明(トランプが大統領当選など、今でも信じられない!!)、今後の動向は見極めたい。継続したとしても、精神論だけでは市場は評価しない。景気回復のために具体的にどのような追加策を打つか、また日銀との協調策を更新し、グレードアップさせなければ、失望の円買いを考えなければならないだろう。
そんな目で日本を見ているのかと、改めて身を引き締めた。
さて、今後1週間の予想レンジは、ドル円は前週と同じく105.80~107.80円。またユーロは、対ドルでは1.1620~1.1820、対円では前週と同じ124.50~126.50円。英ポンド/ドルについては、合意なき離脱の可能性が高まっていることを背景に大幅安の1.2500-1.3000と予想する。
(2020/9/9, 小池正一郎)