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第436回 ~恐れることないテーパータントラム~

2021年06月16日

 ドル円は再び110円を超えてきた。ただ買い上がっていく熱気というか力強さが全く感じられない。いわゆる「FOMC待ち」ということだろうが、その心は「テーパリング(債券購入規模の縮小)の有無、開始時期の発表待ち」とも言える。今回は、特に年4回(3,6,9,12月)の経済・金利見通しの発表がある会合であることから、特に注目度が高い。

 まず、5月20日に発表になった4月開催FOMCの議事録で、一部の出席者からテーパリングについて、「いずれかの時点で協議することを否定しない」とのことが示されており、また最近の物価上昇を背景に、市場では、金融緩和政策の変更がスケジュールにあがってきているとの見方が急速に高まってきていることを上げておきたい。

 そのため、テーパリングに相当する文言が声明文で含まれるようなことがあれば、内容次第では、一気に金利が上昇、ドル相場の上昇が起こる可能性がある。市場が恐れることは、過去にテーパリングの事前発言で、金利が急上昇した実績があり、今回この再来があるのではないかということである。

 それは2013年5月にバーナンキFRB議長(当時)が「量的緩和縮小」を示唆する発言をしたことで起こったいわゆるバーナンキ・ショックである。当時は、リーマンショック(2008年9月)対応で導入したゼロ金利政策から約4年経過し、既に量的金融緩和(QE)二回と、ツイストオペ(短期債を売却し長い期間の証券を購入)も実施しており、金融緩和政策からの出口についての思惑が出ていた時だった。

 量的緩和縮小を示唆する、突然のバーナンキ発言に市場は驚愕、10年国債利回りが1.70%~3%まで上昇するなど金利の上昇、株価下落、ドル下落といった大きな混乱を市場にもたらした。この状態は「テーパータントラム(市場の動揺)」と呼ばれている。最近の物価の加速度的な上昇を受けて、この記憶がよみがえっており、そのために今回のFOMCが注目を浴びているのである。

 さて、この市場の心配に対し、さまざまの見方が市場で交わされている。その中で筆者が共感を得ているのは、「テーパリング、恐れるに足らず」である。声明文になくても、パウエル議長は、終了後の記者会見で記者の質問に答える形で、議論の必要性については触れることになるかもしれない。しかしベース効果(1年前の指標が低いと対前年比は高くなる、いわゆる分母効果)を元に、その時期については「時期尚早」として明言を避けることになると予想している。

 それ以上にテーパリングを示唆する文言や発言があっても、今回は前回と環境が違うと考えている。第一に、過去の前例が経験となり、参加者はその対応策を準備できると考えられる。その記憶には、前回のテーパ―タントラムで金利が上昇しても、結局は低下した実績がある。また、今回の量的緩和の金額が莫大であり、多少のテーパリングでも十分吸収できると考えられる。加えて前回2013年は、ダブルリセッションの心配があったが、今回はその可能性が極めて少ないとの見方がある。

 この結果は日本時間で今晩未明に発表になる。個人的には、「大山鳴動ねずみ一匹」となり、金利は低下、ドル軟調推移と予想しているが、果たしてどうなるか。

 さて、今後1週間の相場見通しは、ドル円は、小幅円高の108.50~110.25円と予想。またユーロはECBの結果を受けて、対ドルでユーロ安の1.2050~1.2250、対円では先週と変わりなく132.50~134.50円と予想。また、英ポンドは小幅ポンド安の1.4000~1.4200と予想する。

(2021/6/16, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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