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第449回 ~賞味期限が近いテーパリング~

2021年09月15日

ドル円が、節目と考えていた109.50円を割ってきた。7月8日以来109.50~110.50円を中心にして続いていたレンジ相場が崩れ始めてきたようだ。きっかけは、昨日発表された米CPI。前月比は総合が+0.3%、コアが+0.1%、と市場予想(それぞれ+0.4%、+0.3%)を下回るものであった。年率では、総合5.3%、コア4.0%と高いものの、物価上昇の勢いはピークを越えたとの見方が市場に広がった。

金利は低下、つれてドル円も下落、発表前の110.10円前後から一気に110円を割り、その後徐々に売られ、NY市場で109.53円の安値を付けた。今日は東京市場で110円に戻ることなく、戻り売りの基調でじりじりと低下、8月17日以来の安値となる109.30円近辺まで売られてきた。間違いなく三角持ち合いから下離れしたとの見方に傾いている。

一昨日までは三角持ち合いの収束も見えていて、その収束点が9月22日前後と予想していた。三角持ち合いの起点を7月2日の111.66円とするか、8月4日の108.72円とするか、のどちらを選ぶかによって収束後の方向に違いがあるが、筆者は7月2日を起点にして下離れすると予想していた。その場合の下値めどは107.50円となる。ただ、このまますんなりと107.50円に行くことはないだろう、ましてや108円割れには何か大きなドル安要因が必要だ。

しかし筆者は、何かが起こる可能性はかなり高いのではないかと考えている。その1は、FRBのテーパリング実施がかなり市場に織り込まれてきたこと。一般的には、テーパリング実施により金利高→ドル高と考えられているが、シカゴ投機筋のポジションを始め、市場参加者の心の準備も相当積上がっていると読んでいる。それゆえ、正式決定後は、いわゆる材料出尽くしとなり、これまでの積み上げたポジションの反転、利食い売りが出てくると予想できる。FRBの発表後すぐポジションのひっくり返しが起こると考えにくいが、時間をおいて一気にドル売りが発生する可能性がある。その備えが必要だ。

第2は、米財政資金繰り不安の高まりである。2年間運用停止となっていた債務上限規制が7月31日に期限が到来し、8月1日から債務天井が復活した。当コラムでも以前取り上げたが、その天井は7月31日の財務省の債務金額であり、それを超える新規の借り入れが1セントたりとも、行うことができない状態となった。現在は、内部のやりくりで必要資金の手当てを行っているが、それも限界があるとして、先週イエレン財務長官は、「来月中に資金は枯渇する」として、議会に早急の債務上限引き上げを要請した。

野党・共和党が格好の交渉材料として簡単に協議に応じていないことが問題を難しくしている。このまま何も進まなければ、政府機関の封鎖、国立公園の閉鎖、公務員の自宅待機が起こり、米国政府のデフォルトという最悪の事態も意識しておかなければならない。良識あるリーダーたちは、最終的には最悪事態の回避に動くと思われるが、他の問題が絡み合うと、何が起こるかわからない、ある時期には、「最悪の事態を考えて行動する」という、究極のリスクオフ行動の勃発も想定しておく必要がある。

さて、今後1週間の相場見通しは、ドル円は先週に比べ円高基調の108.30~110.30円と予想。またユーロは、対ドルで先週と同じ1.1750~1.1950、対円では129.00~131.00円とユーロ安を予想。英ポンドはポンド高基調で1.3700~1.3900と予想する。

(2021/9/15, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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